金融市場から世界の環境問題を見てみよう
金融市場が投資家の評価の場に
これまで金融市場は、企業が「資金調達を行う場」として機能していました。投資家たちは、企業の売上や利益など財務的視点で企業を選別し、その企業の株式や債券を購入したりすることで資金を提供してきたのです。しかし最近の金融市場は、企業が「投資家たちに評価される場」に変化してきました。財務的視点に加えて、環境への取り組みや社会課題解決などが評価されます。投資家は、企業が「気候変動対策をしているか」、「CO₂の排出に関する情報をオープンにしているか」「開発による地域の人たちへの影響を考慮しているか」など、社会に対してどんな行動を取っているかにも注目するようになりました。
環境問題は人類共通のリスク
金融市場がこのように変化した理由の1つには、干ばつや高温、大雨など世界の気候変動を私たちが肌身で感じたことで、環境問題が人類共通のリスクと認められるようになったことがあげられます。そのため、リスク課題に対処する企業へ投資する動きが加速しました。欧米では、自分たちの年金運用のために個人でも投資を行うことが一般的ですが、「環境問題に取り組まない企業には投資しない」と明言する人もいます。
環境問題に取り組む流れは止まらない
環境問題への関心は高まっていますし、問題解決に取り組む企業への投資も増えています。多くの企業や団体がSDGsやESGへの取り組みをうたっていますが、実体を伴っているかが疑わしい企業もあります。このように見せかけだけの環境活動を「グリーンウォッシュ」、または「SDGsウォッシュ」と言います。金融市場にも、「ウォッシュ」の視点が入って厳しく評価されるでしょう。
こうした環境問題に対する取り組みの流れは、SDGsの期限である2030年が過ぎても、たとえ世界の大国が脱炭素に反対しても、止まることはないでしょう。なぜなら、こうした課題はすぐに解決されるものではないからです。私たちの金がどこに投じられるか見守っていく必要があります。
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先生情報 / 大学情報
創価大学 経営学部 経営学科 教授 野村 佐智代 先生
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財務管理論、環境マネジメント先生が目指すSDGs
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