「原子発振器」で広がる電子社会の未来
携帯電話に必要な周波数
携帯電話やインターネットを利用するには、正確な周波数を発生させる装置が必要です。電波によって通信する電子機器は、割り当てられた特定の周波数を利用して情報をやりとりしているため、周波数が正確でないと、電波を送受信することができなくなってしまいます。テレビやラジオが、チャンネルごとに電波の周波数が違うのと同じで、携帯電話も、それぞれの機器が異なる電波を使い分けることで、混線することなく通話ができるのです。そのために携帯電話の部品として欠かせないのが、「水晶振動子」というものです。
水晶振動子とは何か
水晶振動子とは、電圧を加えたときに水晶が振動する原理を応用して、精密で安定した周波数を発生させる装置です。電波を利用するものだけでなく、多くの電子機器では、回路間の同期(作動を時間的に一致させること)などのために安定した周波数が必要とされます。ですから、今では、この水晶振動子が、さまざまな家電製品やパソコン、時計や自動車など、あらゆるところに部品として使用されています。一般家庭の家の中にも、数十個はあると思っていいでしょう。
原子発振器で携帯電話が進化する
水晶振動子が作ることができる周波数の安定度は、5~6桁です。しかし、さらに精度を高めることができれば、携帯電話はより使いやすくできます。そのために開発されているのが、10~11桁の精度で周波数を得ることができる超小型「原子発振器」です。原子発振器は、現在は正確な時を計る原子時計などに応用されていますが、まだ携帯電話に内蔵できるほどには小型化されていません。超小型化が実現し、原子発振器が内蔵されれば、携帯電話が電源を入れるとすぐに立ち上がるほか、高速通信と、より安定した通話が可能になると言われています。携帯電話に限らず、情報通信や医療の分野への応用も大いに期待されています。
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