数学や物理を駆使して、「医学」に貢献する方法がある!
放射線治療で、患部の位置を正確にとらえる
放射線によるがん治療では、患部に放射線を照射することで、がんの縮小や消滅をめざします。患部に放射線を当てる際には画像を見ながら位置を合わせ、ずれのないよう狙いを定めて照射する必要があります。エックス線検査で使われる放射線は10万ボルト程度ですが、がん治療で使われるものは600万ボルトにのぼります。がん治療で使う放射線は強いので、治療時に体のどこに当てているのかがわかりにくくなってしまいます。
腫瘍を見ながら照射するため、画像をシャープに
今までの画像では照射する腫瘍(しゅよう)の位置は、ボヤッとしか見えないので、骨の位置を目安にしていました。また体内に金属のマーカーを挿入して位置決めをすることもありますが、最近の放射線治療は通院して行うスタイルに変わりつつあり、体の中にマーカーを入れたままにするのは無理があります。そのため、治療を行うたびに、画像を見ながら照射位置を特定する必要があります。
そこで現在、研究が進められているのが、治療前や治療中にターゲットを正確にとらえるための画質の向上です。数式や確率などの数学を駆使して画像化プログラムを改善し、腫瘍をはっきりと視認しながら照射できるプログラムの開発が続けられています。
画像の処理速度アップで、患者さんの苦痛を少なく
また画質向上と同じくらい重要なのが、処理スピードの高速化です。従来は、患部がはっきりと見えるレベルまで画像を処理するのに30分ほどかかっていました。しかし現在は、わずか7~8秒で処理は終了します。おかげで患者さんは、30分間も体位を保ったまま耐える必要がなくなりました。これは従来の乱数を用いて数万回の計算を繰り返して統計的に答えを出すモンテカルロ・シミュレーションという手法から、超並列計算などを駆使する手法に変えることで可能になりました。このように、数学や物理学を駆使して新しい技術を開発することでも、医学への貢献はできるのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 健康福祉学部 放射線学科 准教授 明上山 温 先生
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