夢の「室温超伝導」への挑戦

夢の「室温超伝導」への挑戦

超伝導研究の歴史と進歩

現在、リニアモーターカーやMRI(核磁気共鳴画像)などへの応用で脚光を浴びている超伝導は、ある物質を絶対零度(-273℃)に近い超低温にすると、物質内の電気抵抗がゼロになるという現象です。この現象自体は、1911年に発見されたものですが、それが実用化されるまでには、長い年月が必要でした。
1986年には、それほど超低温でなくても超伝導現象が起きる「高温超伝導」が発見されました。「高温」と言っても超低温に比べればの話で、実現できているのは、-200~-100℃という、まだかなりの低温です。超低温の環境を作るのは非常に難しくコストもかかるので、なるべく高温で超伝導が実現できれば、実用化への大きな進歩となります。こうして超伝導の高温化の研究が世界中で行われ、将来的には常温での超伝導、いわゆる「室温超伝導」も実現できるのではないかと考えられています。

高温超伝導はまだ解明されていない?

超伝導物質には、電気抵抗がゼロになる以外にも、磁力線に対して反発するという性質があり、リニアモーターカーでは、この反発力を生かし、車両を線路から浮かせて走らせることができます。リニアでは、やはり高温超伝導の技術が使われていますが、実は、なぜ高温でも超伝導が起こるのかということに関しては、科学的にまだはっきりとは解明されていないのです。その原理が解明されれば、室温超伝導への道が開けるかもしれません。

「超流動」から「超伝導」を探る

超伝導は、実験が非常に難しい研究であるため、理論的な扱いも複雑になります。ですが、超伝導と同じような現象として、超低温にした液体や気体の粘性がゼロになる「超流動」という現象が発見されています。この超流動は、超伝導と類似した原理で起こるものと考えられており、超伝導研究者からも注目されています。
超流動は、超伝導より実験と理論が整合しやすいので、超流動現象を解明することが、超伝導の解明への近道であると期待されているのです。

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東京都立大学 理学部 物理学科 准教授 荒畑 恵美子 先生

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物性物理学

メッセージ

身近に起きるさまざまな現象について、「なぜこうなるのだろう?」と疑問に思う人は多いでしょう。物理では、そういったことを、とことんまで突きつめられるかどうかが大事なのです。私は、高校の理系科目の得意・不得意は、実はあまり関係ないのではないかと思っています。私も高校の時、理系科目は苦手でした。もしあなたが、物理は好きだけれどもそのほかの理系科目が苦手だからという理由で、進むのをためらっているなら、それは思い込みかもしれません。
自分の頭でとことん考えること、それが研究には一番重要な要素だと考えています。

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