今、あらためて日本のひとり親家庭福祉法政策を考える
日本のひとり親家庭の半分が貧困
統計によると、日本のひとり親家庭の半数が貧困状態にあります。2010年の調査では、OECD諸国の中でひとり親の貧困率が最も低かったのがデンマークの9.3%で、日本は50.8%と最も貧困率が高かったのです。その一方で、日本のひとり親、特に母子家庭の就労率は85%と、諸外国と比べても高くなっています。つまり日本のひとり親家庭はしっかり働いているのに貧困状態であり、低賃金・長時間労働・非正規雇用の労働環境も影響していると考えられます。
貧困は、健康と教育に格差を生む
貧困になると、まず健康格差が生じます。貧困状態にある家庭は、一般家庭と比較して栄養状態が良くないというデータがあります。そして、ひとり親家庭の子どもは経済状況を心配しながら進学や勉強をしなければならない教育格差もあります。よく言われるのは「スマホを持たせられるくらいだから貧困ではない」という考え方です。しかし、ひとり親が長時間働くことで、子どもが家で一人になる時間も長くなるため、子どもの安全のために費用を捻出してスマホを持たせていることが多いのです。
ひとり親家庭に優しくない法制度
ひとり親家庭に対する福祉政策や社会保障の法制度は、高齢者や子どもに対するものと比べて決して十分とは言えません。ひとり親家庭に家事を支援するヘルパーを派遣する制度や、資金の貸し付けなどを実施している自治体もありますが、その情報が知られていなかったり、取り組んでいない自治体も多かったりと、あまり機能していないのです。また、パートナーと死別したひとり親は遺族年金を受け取れますが、離別した場合には受け取れません。その背景には「離婚を選んだのだから、生活が苦しくても本人のせい」という世間の偏見があるからです。
法制度はその国の人間の価値観から生まれます。今の日本から、人に優しい法制度は生まれないのでしょうか。当事者だけでなく、日本全体の持つ課題と言えるでしょう。
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和歌山大学 経済学部 経済学科 教授 金川 めぐみ 先生
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