後悔しない未来のために:行動経済学で考えてみよう
行動経済学とはどんな学問?
行動経済学とは、経済学の考え方に人の心理に関わる要素を組み入れて経済活動を分析していく、近年注目を集めている研究分野です。ある人の経済活動がほかの人に及ぼす影響を経済学では「外部性」と呼びますが、それに対してある個人の中で起こるコンフリクト(対立)である「内部性」に着目しているのが、行動経済学の特徴の一つです。
人々に行動変容を促すには?
スマートフォンのゲームアプリに、自分でも思いがけないほどハマってしまった経験のある人は多いと思います。最初のうちは「やりすぎないように」と思っていたのに、次第に熱中してプレイ時間はどんどん長くなり、アイテムなどにもどんどん課金し、最後には自分で後悔するような結果になることも少なくありません。こうした、時間もお金も浪費しまうような効率性・合理性から外れた行動になぜ走ってしまうのかを、行動経済学では内部性に着目して、子細に分析していきます。
経済活動において人々の行動の変容を促す際の例として、損失に関するメッセージがあります。「損をする」ことに対して、人はとても敏感です。例えば、日本の多くの自治体では、一定以上の年齢に達した住民に、特定の期間内に、無料あるいは低負担で健康診断を受けられることを案内しています。自治体の中には「その期間内に行かないと、無料で健康診断を受けられなくなる」と伝えることで、健康診断を受けないことの損失を強調し、行動変容を促しています。
さらに高まるEBPMの重要性
人々に行動変容を促すような計画を策定する際には、その行動変容に関わるデータを厳密に収集・検証・分析した上で、エビデンス(証拠)に基づいた計画を立てる必要があります。エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング(EBPM)と呼ばれるこの取り組みは、政府や自治体をはじめとして、広く私たちの社会の経済活動において、今後さらに重要視されていくでしょう。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 法学部 国際公共政策学科 教授 室岡 健志 先生
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