ブラック企業をなくすためにすべきこと~労働法の視点から~
企業コンプライアンスとは?
コンプライアンスとは「法令遵守(じゅんしゅ)」、すなわち社会のルールを守ることで、企業コンプライアンスとは、企業が法律・法令を守って企業活動を行うことです。しかし残念なことに、法律を守らない企業もあるのが現実です。例えば、「ブラック企業」と呼ばれる企業があります。働く人の健康や命を脅かすような働き方を強いる企業のことです。労働者が長時間労働の末に自殺したり、過労死したりする事件も起こっています。企業コンプライアンスを徹底し、労働法が遵守されていれば、こうした事態は避けられたはずです。
企業に「安全配慮義務」を徹底させるために
企業には「労働者がその生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をすべき」という「安全配慮義務」が課せられています。長時間労働の強制はもちろん、放置しているケースでも安全配慮義務違反が問われ、裁判でも企業に多額の賠償金の支払いが命じられています。しかし、それでも過労死や過労自殺がなくならない現実があります。そこで近年、会社だけでなく、業務執行を行う取締役などの経営陣にも損害賠償責任を認めるケースが増加しています。自分たちも賠償責任を負うとなると、経営者はきちんとした安全配慮義務履行体制の構築に真剣に取り組むはずです。つまり取締役に労働法の遵守を促すことで、企業コンプライアンスの徹底が図られることが期待されるのです。
労働者・企業・社会の利益を守る
しかし、安全配慮義務の内容が適正に示されないと、会社や経営者が萎縮し、企業活動への意欲が損なわれる恐れもあります。それは経済活動にとってもマイナスです。労働法とは、労働者を保護することはもちろんですが、同時に企業の利益も尊重し、社会全体の活力の向上に寄与するものでなければなりません。
そのためには、企業側がどのような体制を構築すれば、安全配慮義務違反に問われないのかを示す必要があります。安全配慮義務の中身を適正に示すことは、労働法研究の重要な課題のひとつなのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 法学部 法学科 准教授 天野 晋介 先生
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