講義No.08766 建築学

駅の混雑をどうやって解消する? 行動モデルから解き明かせ!

駅の混雑をどうやって解消する? 行動モデルから解き明かせ!

どこにエスカレーターを増やせばいいか?

駅のホームで降車客がエスカレーターに殺到し、長い列ができていることがあります。ホームの混雑は、利用客の利便性はもちろん、安全面から考えても改善したいところです。エスカレーターを使う理由は「楽に移動したいから」だけではなく、「電車を降りた場所から近いから」や「目的の改札近くまで行けるから」なども考えられます。
そこで、駅の構造や利用客の特性をふまえつつ、実地での調査や統計データも参考にしながら、ホームでの人の流れをシミュレーションする研究が行われています。その結果、どこにエスカレーターを増設すれば混雑が解消するかといった予測ができるようになり、費用対効果の高い改修案が計画できます。

客をどうやって呼び込むかのヒントにもなる

施設利用者の行動と「店舗や出入り口の位置などの建築空間」との関係性を分析することは、混雑解消など利便性の向上だけではなく、商業施設の利用を促すマーケティングの観点からも注目されています。
例えば、空港カウンターから離れた位置に商業施設を設ける場合、もし人気店が出店すればどれくらいの客の流入が見込めるのかといったケースをモデル化し、施設の改修計画に反映させる研究があります。同様に、広告を掲示する位置や内容を検討するときにも、施設利用者の特性や行動モデルが参考にされているのです。

非常時の避難誘導を適切に

火事や地震など非常事態が起きると、予想外の行動をする人が出てきます。そのような想定外の行動モデルもできるだけデータに反映させ、より実態に即したシミュレーションを行うことで、逃げ遅れる人を減らせる可能性があります。特に、不特定多数の人が集まる大規模なイベントなどでの非常時に、適切な避難誘導が可能かどうかは、今後ますます検証が求められていくでしょう。このように人の行動パターンと空間の関係を解き明かす研究は、人々の暮らしをより安全で、快適にすることにつながっているのです。

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先生情報 / 大学情報

日本工業大学 建築学部 建築学科 准教授 木下 芳郎 先生

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メッセージ

私たちが暮らしている社会には、考えるヒントや素材がたくさん転がっています。普段から、いろいろなことに関心を持ち、「なぜこのようなことが起きるのか」、イメージするように意識してみてください。
大学に入ったら、問題意識を持つことが自分の研究を進めるヒントとなり、大学卒業後の進路選びの参考にもなります。また、高校での勉強がどう延長線上につながっていたのかも、わかるときがくるでしょう。高校生のうちから社会をよく観察するとともに、ぜひ日々の勉強にもしっかり取り組んでください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

日本工業大学に関心を持ったあなたは

「We do have!ー日本工大は持ってる!ー」
私たちがこれまでに大切にしてきたこと、素晴らしい財産をもっていることを、みなさんと共有したい、その合言葉が「We do have!」です。

基幹工学部、先進工学部、建築学部を設置する日本工大には、ここでしか得ることのできないさまざまな魅力があります。

1学年から技術と合わせて理論を学ぶ「デュアルシステム」や、実工学を学ぶ礎となる「工学基礎教育」など、本学独自の学修システムで、「学び続ける技術者」を育てます。