駅の混雑をどうやって解消する? 行動モデルから解き明かせ!
どこにエスカレーターを増やせばいいか?
駅のホームで降車客がエスカレーターに殺到し、長い列ができていることがあります。ホームの混雑は、利用客の利便性はもちろん、安全面から考えても改善したいところです。エスカレーターを使う理由は「楽に移動したいから」だけではなく、「電車を降りた場所から近いから」や「目的の改札近くまで行けるから」なども考えられます。
そこで、駅の構造や利用客の特性をふまえつつ、実地での調査や統計データも参考にしながら、ホームでの人の流れをシミュレーションする研究が行われています。その結果、どこにエスカレーターを増設すれば混雑が解消するかといった予測ができるようになり、費用対効果の高い改修案が計画できます。
客をどうやって呼び込むかのヒントにもなる
施設利用者の行動と「店舗や出入り口の位置などの建築空間」との関係性を分析することは、混雑解消など利便性の向上だけではなく、商業施設の利用を促すマーケティングの観点からも注目されています。
例えば、空港カウンターから離れた位置に商業施設を設ける場合、もし人気店が出店すればどれくらいの客の流入が見込めるのかといったケースをモデル化し、施設の改修計画に反映させる研究があります。同様に、広告を掲示する位置や内容を検討するときにも、施設利用者の特性や行動モデルが参考にされているのです。
非常時の避難誘導を適切に
火事や地震など非常事態が起きると、予想外の行動をする人が出てきます。そのような想定外の行動モデルもできるだけデータに反映させ、より実態に即したシミュレーションを行うことで、逃げ遅れる人を減らせる可能性があります。特に、不特定多数の人が集まる大規模なイベントなどでの非常時に、適切な避難誘導が可能かどうかは、今後ますます検証が求められていくでしょう。このように人の行動パターンと空間の関係を解き明かす研究は、人々の暮らしをより安全で、快適にすることにつながっているのです。
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日本工業大学 建築学部 建築学科 准教授 木下 芳郎 先生
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