時代が求めるニーズに建築ができることは?
建築計画学とは「使われ方」を考えること
建築学には構造学や意匠学など、さまざまな分野があります。その中で建築計画学とは、その空間に集う人々による「使われ方」を追究する、と言えばわかりやすいでしょう。
日本では急速な経済成長を契機に、どの地域でも同じような大量の建物が建てられてきました。住宅以外にも、学校や病院、図書館、高齢者施設といった地域の公共施設がありますが、少子高齢化や地方の過疎化といった問題が注目される現在、これらの「使われ方」の知見を集めた地域施設計画が求められています。
ユーザーの代弁者になる
例えば、子どもの数が減った地方では、学校の統廃合、小中一貫校としての再編などが進んでいます。また、両親の共働きで学童保育の需要が増えたり、文科省の政策で放課後や週末の教室の活用の取り組みが始まっています。
急増している高齢者施設では、高齢者の送迎スペースやバリアフリーの確保、現場の要望に沿った動線や部屋の配置を考えなければなりません。図書館なら、利用したくなる造りを年齢層ごとに考えます。いずれも実際のニーズと使われ方を参考に、より現実的で効果的な工夫をすることが必要です。
建物には、地域ごとの特性もあります。雨が多くて寒い地方では、人は屋外にあまり出ないので、屋外施設が宝の持ち腐れになることがしばしばあります。どこに建てるかという立地条件も重要なのです。
「用・強・美」で立体的に考える
古くから建築には「用・強・美」という言葉があります。建築は用(機能)と強(構造)と美(美しさ)という三要素があり、どれが欠けても価値を失うという意味です。
しかし美しさの価値観も時代によって変わります。かつてはポストモダニズムといって、既存の価値観を破壊するものがもてはやされました。今はエコロジーが重視され、地域の木材などを豊富に使う工法が流行しています。つまり正解は一つではなく、その内容は時代によって刻々と変わるものなのです。ニーズの変化に対応しながら、社会や人にやさしく寄り添う建築が求められます。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
島根大学 総合理工学部 建築デザイン学科 教授 細田 智久 先生
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