古くて新しい! 広くて深い! エンジンの研究
エンジンに関する課題は山積み
およそ130年前に開発されたガソリンエンジンやディーゼルエンジンは、小型で汎用性が高く砂漠や極寒地でも使用できるために、自動車などの輸送機器の動力源として主流を占めています。一方で地球環境を守るためには、一層クリーンで高効率なエンジンが求められていて、研究課題は山積みです。課題を解決していくためには、エンジンが動力を発生させる根本的な現象である「燃焼」の化学反応を理解し、従来の理論や分析技術ではわかっていない反応の仕組みを解明する必要があります。
排ガスに含まれる成分の謎
排ガスの中に含まれる有害物質は、そのほとんどが燃焼に関わる化学反応によって生成されるものです。ガソリンや軽油に含まれる分子のほとんどは炭素原子と水素原子が複雑に結合したもので、炭化水素と呼ばれます。その炭化水素が酸素と反応を繰り返し、最終的には二酸化炭素や水に変化していくのです。
しかし、この過程の途中で反応が止まり、二酸化炭素や水になれなかった成分も存在します。それらの成分の中には、大気汚染の原因となったり、生体系へ影響したり、またエンジンにとって好ましくない現象を引き起こすものが含まれていると考えられていて、詳細な解析が求められています。
排ガスを再利用する?
一方、排ガスをもう一度エンジンに吸わせる「排気再循環」も注目されています。これは排ガスに残っている燃え残りの成分を積極的に利用し、クリーンで高効率な燃焼につなげようというものです。例えば、エンジンに再び吸い込まれた排ガスはエンジンの燃焼温度を下げて有害な窒素酸化物を減らしたり、逆に寒い時期などにはエンジンを暖めて燃焼を助けたりする作用があります。また点火プラグなどに頼らないで火をつける「自着火燃焼」を、効率よく適切に制御するために排気再循環を利用する研究も進められています。
このように長い歴史を持つエンジンに新しい可能性を見出し、広く深く研究することは、未来の地球を守る上でも、非常に重要な役割を担っているのです。
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日本工業大学 基幹工学部 機械工学科 教授 中野 道王 先生
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