講義No.10111 機械工学

「振動」は体を健康にする?

「振動」は体を健康にする?

「人間のような機械をつくる」ってどういうこと?

自動車やオートバイ、さらに道路工事に使う工具やチェーンソーのような機械には振動と騒音がつきものです。機械工学とは基本的に機械の仕組みを考えることですが、振動・騒音を低減することも求められます。そこで考えられるのは、「人間のような機械をつくる」ことです。
人間の場合、揺れる電車の中でも簡単には倒れたりしません。これは脳で考え筋肉の力でバランスをとって、振動や揺れの影響を抑えているからです。人間の筋肉のように硬くなったり柔らかくなったりしながら力を制御できる機能を自動車やビル、橋梁などの構造物に導入しようというのが、「人間のような機械」の意味するところです。

人間の脳のような学習機能を持った機械

「人間のような機械をつくる」といっても、すぐさま人型ロボット(ヒューマノイド)をつくるということではありません。具体的には、地震のときに建物の揺れを小さくする「減衰器」や人間の脳のような学習機能を持ったコントローラーを開発してインテリジェント(知能)化を進めることなどです。人の持つ優れた機能に学んで、それを機械に持たせて振動や騒音を抑える仕組みを考えるのも機械工学に求められている課題なのです。

振動を利用して骨折が治る?

振動は一般的に「悪」と思われていますが、これを逆に利用、活用することもできます。人間の体に振動を与えると、いろいろな良いことがあるとわかってきました。2002年のサッカーW杯の直前にイングランドのベッカム選手が骨折したとき、振動を利用した治療によって治療期間を短くできました。
機械工学、振動学の基本は「力学」です。力学の観点から生物や細胞をみていくと医療分野で応用できる新しい発見があります。細胞に振動を与えると活性化して、脳神経などの再生医療につながる可能性もあります。振動の医療効果の検証、そして良い振動を出す機器など、さらなる研究開発が求められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

横浜国立大学 理工学部 機械・材料・海洋系学科 准教授 白石 俊彦 先生

横浜国立大学 理工学部 機械・材料・海洋系学科 准教授 白石 俊彦 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

機械工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私が研究者になるまでには、自分自身が全力で「今」を生きる中で、人との出会いと、そこでの学びが大きく影響したと実感しています。あなたも、さまざまなことに興味を持ち、その中から自分が心の底から面白いと思えるものを見つけましょう。
私が取り組んでいる工学と医療の共同研究の場合、体の仕組みや細胞を知るための生物や化学、物理学などの知識も必要です。さらに海外の研究論文を読んだり書いたりするには英語力も必要です。そういう視点で今の高校の勉強を考えると、どの教科の勉強にも力が入るはずです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

横浜国立大学に関心を持ったあなたは

横浜国立大学は、高い国際性と実践的な学問を尊重し、社会に開かれた大学をめざします。全学部の学生がひとつのキャンパスで学び、学部の垣根を越えた交流ができ、国立大学には数少ない経営学部も置かれています。新しい潮流を起こして21世紀の人類社会に貢献できるよう、社会からの要請を的確に把握し、国民から委ねられた資源を有効に活用しつつその活動を開放し、社会の期待に応えます。