「振動」は体を健康にする?
「人間のような機械をつくる」ってどういうこと?
自動車やオートバイ、さらに道路工事に使う工具やチェーンソーのような機械には振動と騒音がつきものです。機械工学とは基本的に機械の仕組みを考えることですが、振動・騒音を低減することも求められます。そこで考えられるのは、「人間のような機械をつくる」ことです。
人間の場合、揺れる電車の中でも簡単には倒れたりしません。これは脳で考え筋肉の力でバランスをとって、振動や揺れの影響を抑えているからです。人間の筋肉のように硬くなったり柔らかくなったりしながら力を制御できる機能を自動車やビル、橋梁などの構造物に導入しようというのが、「人間のような機械」の意味するところです。
人間の脳のような学習機能を持った機械
「人間のような機械をつくる」といっても、すぐさま人型ロボット(ヒューマノイド)をつくるということではありません。具体的には、地震のときに建物の揺れを小さくする「減衰器」や人間の脳のような学習機能を持ったコントローラーを開発してインテリジェント(知能)化を進めることなどです。人の持つ優れた機能に学んで、それを機械に持たせて振動や騒音を抑える仕組みを考えるのも機械工学に求められている課題なのです。
振動を利用して骨折が治る?
振動は一般的に「悪」と思われていますが、これを逆に利用、活用することもできます。人間の体に振動を与えると、いろいろな良いことがあるとわかってきました。2002年のサッカーW杯の直前にイングランドのベッカム選手が骨折したとき、振動を利用した治療によって治療期間を短くできました。
機械工学、振動学の基本は「力学」です。力学の観点から生物や細胞をみていくと医療分野で応用できる新しい発見があります。細胞に振動を与えると活性化して、脳神経などの再生医療につながる可能性もあります。振動の医療効果の検証、そして良い振動を出す機器など、さらなる研究開発が求められています。
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横浜国立大学 理工学部 機械・材料・海洋系学科 准教授 白石 俊彦 先生
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