大型船の心臓部 ディーゼル機関の排ガスをクリーンに!
大型船が抱える排ガス問題
大型船舶のエンジンには熱効率の高いディーゼルエンジンが使われています。燃料として安価な重油が使えることで運航にかかるコストを下げられるメリットがある一方、排ガスに汚染物質が多く含まれるという問題があります。排ガスに含まれる汚染物質は、ガス状のものと微細な粒子(すす)の2種類があげられます。粒子に着目すると、ディーゼルエンジンの排ガスからすすを取り除く装置として、トラックやバスではDPFと呼ばれるセラミックフィルターが使われています。DPFは定期的に再生(つまりを取り除く)する必要があり、連続して長時間エンジンを止められないことが多い外航用の大型船では運用が難しくなります。
舶用機関用電気集じん装置の開発
陸上にある発電所やプラントでは、排ガスからすすを取り除くために電気集じん装置が広く使われています。電気集じん装置は、すすを帯電させ、電界をかけた空間ですすをマイナス極に引き寄せて捕集するもので、これを船に応用する研究が行われています。ただし船の場合、稼働状況によって排ガスの量や粒子濃度が頻繁に変わることや、排ガスの中に含まれる油分が電極に堆積してしまう、などの理由により安定した集じん性能を得ることが難しく、まだ実用化にいたっていません。将来的にはすすの9割以上が取り除かれて、排ガスがクリーンになることが期待されています。
代替燃料の排ガスも透明に
船は自動車に比べて長期間利用することを前提として作られており、価格も高額であるため、新しいものに変えるのは簡単ではありません。船舶から排出されるGHG削減のための選択肢の一つに、現在稼働している船の燃料を重油からバイオ燃料に切り替えることです。バイオ燃料の排ガスにもすすが含まれるため、電気集じん装置は引き続き役立ちます。
日本は島国であるため、貿易の大半を海運が担っており、国内の長距離輸送でも海運が大きな役割を果たしています。商船と呼ばれる大型船や中型船等に関する研究は、社会を支える礎の一つなのです。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋工学部 海洋電子機械工学科 准教授 佐々木 秀次 先生
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先生への質問
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