乗客の体温も無駄にしない! 飛行機の電動化を支える省エネ技術

乗客の体温も無駄にしない! 飛行機の電動化を支える省エネ技術

航空機の電動化で二酸化炭素削減

電気自動車のように飛行機でも、エンジンではなくモーターで推力を得ようという電動化の研究が進んでいます。飛行機は、人間一人を運ぶときに排出する二酸化炭素の量が電車の5~6倍もあります。そのため少しでも省エネで二酸化炭素削減になるように研究されているのです。
秋田県で行われている内閣府のプロジェクトとして、エンジンの推力で飛行機を飛ばすのではなく、エンジンで発電し、モーターを回して推力とする、航空機システム電動化の研究が進んでいます。モーターの動きを細かく制御すると、エンジンで飛ぶよりも燃費が良くなることが期待されています。

機内と機外の温度差や圧力差をエネルギーに変える

また、この航空機システムでは、今まで無駄にしていたエネルギーをうまく利用して省エネにつなげています。例えば空調です。従来の飛行機のエンジンでは、機外の低い気圧の空気を吸い込んで圧縮し、そこに燃料を噴射して燃やすことで推力としています。現状では、エンジンで圧縮した空気を一部抜き取って、客室の気圧や温度を調整する空調に利用しています。ただし、エンジンから圧縮空気を抜き取りますので推力の効率が低下します。この研究では、電動コンプレッサーを使って客室に空気を送ります。コンプレッサーを動かす電力の一部を、高温高圧の空調空気が低温低圧の機外に流れ出る力を使って発電します。

乗客の体の熱を吸収して電力に変える

これまで排熱として捨てていた乗客の体から発する熱もエネルギーとして回収し、電気に変えて、コンプレッサーを動かす電力の一部として利用します。徹底したエネルギー利用で、コンプレッサーを動かすために必要なエネルギーの約40%が省エネできることがわかりました。
こうした省エネ技術の根底にあるのが、空気の流れに関する「流体力学」、エネルギーシステムに関する「熱力学」、「伝熱工学」という学問の成果です。流体力学や熱力学は、航空機だけでなく、さまざまな機器のエネルギー効率の改善に役立っています。

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秋田大学 総合環境理工学部 社会システム工学科 教授 足立 高弘 先生

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メッセージ

「英語ができないから外国に行けない」と考えるのではなく、「外国に行くと英語が話せるようになる」と考えてみましょう。研究活動もそうですが、勉強でも、何かができたら次のステップに進むのではなく、できなくても前に進んだほうが理解が進みます。わからなくてつまずくことがあっても、とりあえず次に進んでみて、後で戻ってみるとわかるようになっていることもよくあります。悩んで止まっているよりも、「大局を見て次に進め!」です。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

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地球を舞台に活躍する資源スペシャリストを養成する「国際資源学部」、教育分野や地域社会における現場実践力を養う「教育文化学部」、地域医療の核となり人々の健康と福祉に貢献する「医学部」、独創的な発想と技術力を育む「理工学部」の四学部が連携し、地域に根ざし世界に発信する教育・研究拠点をめざしています。
四季の彩り豊かなキャンパスでは、日本全国そして世界各国から集った学生がそれぞれの目標に向かい、勉学や課外活動に打ち込んでいます。