医療の最前線に立ちながら、その進歩に貢献する「臨床研究医」
臨床現場で研究を行う「臨床研究医」
病院で患者さんを診察・治療する医師を「臨床医」と言いますが、大学の医学部などで医療の研究を担う「研究医」もいます。研究医は未解明の病気の原因や治療法の解明を担う立場で、マウスなどで実験を行ったり、試験管内で研究をしたりする「基礎研究医」と、臨床現場で実際に診察にも携わりながら研究を行う「臨床研究医」に大きく分けられます。しかし、臨床研究医の役割とその意義はあまり知られていません。
最新の医学的知見を実用化へつなぐ役割
臨床研究とは、新薬の効果や新たな治療法などを実際に患者さんに対して検証し、実用化につなげる研究です。臨床研究を行うのが、大学病院をはじめ国立病院や医療センターにいる臨床研究医なのです。例えば肺がんであれば、どんなタイプの肺がんにどの薬剤をどんなふうに投与すれば効果が上がるのか、量、投与方法、投与の順番などについて実際の患者さんに参加してもらう臨床試験を繰り返し行い、信ぴょう性の高いデータを収集します。臨床研究のプロセスを経て初めて、さまざまな病気の治療指針がアップデート(更新)されるのです。
臨床研究から生まれる新たな医療アプローチ
肺がんの新たな治療法として、ワクチンやインターフェロンなどで免疫力を上げてがん細胞に対抗しようという「免疫療法」の研究が注目されましたが、あまり効果は上がりませんでした。しかしその後、がん細胞には人体の免疫作用を阻害している分子があり、それを薬剤でブロックすると劇的に免疫が作用して効果が上がることが臨床研究により明らかになりました。
肺線維症という難治性の病気では、肺組織の線維化に関わる増殖因子の働きを阻害する薬剤が画期的な効果をもたらすことがわかり、抗線維化薬として臨床現場に登場しています。臨床研究の結果からは、薬剤の意外な効果や、今まで誰も考えなかった医療のアイデアが生まれる可能性があるのです。
臨床研究医は、医療の最前線でドクターとして患者さんを診ながら、常に新たな医療の可能性を追究しているのです。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 医学部 医学科 呼吸器・膠原病内科学分野 教授 西岡 安彦 先生
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