これからの薬剤師には、臨床と研究を行き来した活躍が期待されている
多くの薬を処方されている高齢者
高齢者が、病院で処方された、たくさんの薬を服用している姿を目にすることがあるかもしれません。平均で6~7種類、中には10種類以上の薬を処方されている高齢者が4人に1人にのぼるというデータもあります。こうした状況を「多剤服用」と言います。
複数の医師による処方は誰が管理すべきか
高齢になると体のあちこちに不具合が出てくるので、複数の医療機関で受診する人が増えます。すると患者さんがどのような薬を服用しているか把握できないまま、多数の薬が処方されてしまうということが起きるのです。
しかし、高齢になると肝臓などの働きが低下し、薬の成分を分解・代謝する機能が弱くなります。そのため薬をたくさん服用しすぎると、意識障がいや低血糖、肝機能障がい、ふらつき、転倒などの副作用を生じやすくなります。また、薬の飲み合わせによっても副作用が生じることがあります。
このような状況で医師がすべての服用薬を把握することは難しいので、患者さんの服用薬を総合的に見ていくのは薬剤師の役割です。
薬剤学を武器に、臨床でエビデンスを蓄積する
多剤服用の状況を改善するには、患者さん個々人の薬歴のデータベース化や、有害事象が誘発される薬剤の組み合わせを、高齢者居住施設や家庭などで探索できるようにすることが求められます。さらに、薬局では薬剤師のスキル向上や在宅での服薬指導、薬剤管理の推進、そして研究室では薬剤の相互作用の解析などをして、エビデンス(科学的証拠)を作成することなどが重要になります。エビデンスがあることで、薬剤師が医師に対して適切な提言ができるようになります。
これからの薬剤師には、臨床現場で課題を発見し、研究室や現場で解決策を考え、再び臨床現場で解決策を実践するという力が必要になります。こうした取り組みが、高齢者医療の向上にとって不可欠と言えるでしょう。
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帝京大学 薬学部 薬学科 教授 黄倉 崇 先生
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