注目の新材料「グラフェン」をバイオセンサとして利用する
世界で一番薄いシート状物質
「グラフェン」は、物質の中で一番薄い透明のシートです。炭素同位体の一種で原子1個分の厚さしかなく、70年以上前から存在の可能性が語られてきましたが、実際に確認されたのは2004年です。
この物質は非常に安定しており、ダイヤモンドよりも強く、しかも電気を速く通す、つまり電気伝導性が高いという構造特性も持っています。とても有用性が高いため、単層で基板に沿って形成される「エピタキシャルグラフェン」の形成法研究や、応用研究が世界中で進められています。
グラフェンをバイオセンサに応用する
グラフェンの特性を生かした研究は、IoT(モノのインターネット)関連のデバイス開発などでも進められています。バイオセンサへの応用もそのひとつです。バイオセンサは、抗原抗体反応など生体システムの特性を利用して特定の物質を検出する仕組みで、病気になると産出されるその病気特有のタンパク質や酵素の検出に利用されています。例えば、糖尿病患者が日常的に使っている血糖値測定器も身近なバイオセンサです。
具体的には、グラフェン製の基板に特定のタンパク質を捕らえる分子をつけ、電流値の変化でタンパク質の存在を検出する仕組みです。安定した素材であるグラフェンは、そのまま溶液の中に入れて電圧をかけても酸化せず強度が保たれます。ですから、唾液や尿、血液など液体状の検体から目的の物質を精度高く検出できるのでは、と期待されているのです。
体調の変化を自分で手軽に把握できる
現在、多くの臨床検査は専門の医療機関に行かないとできません。しかし、このようなバイオセンサが実用化され、例えばスマートウォッチのように携帯できるようになると、自分の体調の変化を日常的に把握することも可能になります。
医療現場には、医師一人あたりの患者数が多く、慢性的な過重労働という問題があるので、手軽に使用できるバイオセンサはこうした問題の改善にも寄与するでしょう。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 理工学部 理工学科 電気電子システムコース 准教授 大野 恭秀 先生
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