体の内側からがん細胞を発見・治療する第5の方法とは
放射性薬剤を投与してがんの位置を知る
核医学とは、放射線を出す元素を組み込んだ薬(放射性薬剤)を投与して、体の内部から診断や治療を行う方法です。核医学診断で有名なのは「FDG-PET」です。FDGは、ブドウ糖に放射線を出す元素をくっつけた薬です。体の細胞は、生きていくためのエネルギー源に「ブドウ糖」を必要としているのですが、がん細胞は増殖が盛んなため、正常細胞の3~8倍のブドウ糖を必要とします。 FDGを人に投与すると、がん細胞にたくさん集まります。集まったFDGから放射線が出ているため、体外から専用のカメラで見ることで、がん細胞の位置や大きさ、がんの進行度合いまでもがわかるため、がん患者さんの治療法を決めるためにとても重要な検査となっています。また、薬によっては、その薬からでる放射線で治療も行います。
がんをみえる化
がん治療の3本柱は、外科手術、抗がん剤治療(化学療法)、放射線治療です。4番目が免疫療法、そして核医学治療は5番目と成り得る治療法です。放射線治療は、体の外から放射線をあてて治療を行います。一方、核医学治療では放射線を出す薬を体の中に入れて、内部から放射線で治療します。薬剤が体の中で動く様子を検出(画像化)でき、がんがある場所に薬剤が集まるため、みえる化できます。つまり、がんを発見し、薬の動きを確認し、治療することができるのです。
臨床にとても近い薬学研究
核や放射線と聞くと、怖いイメージがあるかもしれませんが、診断では副作用がないに等しく、治療でも抗がん剤治療とくらべて副作用が少ない治療法です。核医学治療は全身療法のため、全身の転移病巣がきれいになくなったケースもあります。また、診断と治療を組み合わせて行うことができるため、治療前に画像により治療効果を予測して、治療を行うことができます。即ち、個別化医療を実現している手法であるといえます。放射性薬剤の研究・開発は臨床に非常に近い薬学研究という位置づけで、社会に貢献しています。
参考資料
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
金沢大学 医薬保健学域 薬学類 教授 小川 数馬 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
薬学、核医学、放射性医薬品学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?