不登校の子どもとその保護者を支援する方法

不登校の子どもとその保護者を支援する方法

不登校児童生徒の支援

学校において、不登校の子どもを支援するのは、スクールカウンセラーや相談室の支援員(以下支援者)といった人たちです。こうした立場にある人たちが、不登校の子どもや、そのことについて悩む保護者に対して、「援助してあげる」「問題解決してあげる」という態度でいると、そこに「壁」が生じてしまいます。子どもはその支援者のあり方を敏感に感じ取り、事態がさらに悪化してしまうこともあります。まずは一緒に遊ぶことやただ一緒に過ごすことを通して、子どもとの関係性を築くことが重要です。

保護者への問いかけ

支援者にとって、保護者に対していかに接するかも重要です。「学校に行かず一日中ゴロゴロしている」「昼夜逆転の生活になっている」「ゲーム依存ではないか」など、不登校の子どもを抱える保護者は悩みをたくさん抱えています。その状況に対して、すぐに具体的な解決策を提示するよりも、「そのことの何が心配ですか?」「想定される最悪の事態は?」「お子さんにどうなってほしいですか?」「このことはお子さんと話し合いましたか?」など、保護者に対して親身な問いを重ねていく方が効果的なケースもあります。それによって保護者は自分の子育てを振り返り、子どもの気持ちに寄り添えるようになることも少なくありません。

展開の広がりを記録する

このように、支援者の態度・姿勢が保護者に影響し、保護者の変化が子どもに影響するといった「展開の広がり」は、学校や教育機関といった臨床の現場でしばしば起こっています。もちろん、ケースによってそのプロセスは千差万別であり、「こういう接し方をすれば、子どもはこうなる」と、一般化することは簡単ではありません。それでも、ケースごとの支援や関わり方、その結果をありのままに記録し、それらを蓄積することは、日々臨床の現場で子どもの心に向き合う「支援者を支援」することにつながります。このような事例研究は、心理学の研究という観点からも大きな意義をもっているのです。

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先生情報 / 大学情報

宇部フロンティア大学 心理学部 心理学科 教授 大石 英史 先生

宇部フロンティア大学 心理学部 心理学科 教授 大石 英史 先生

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臨床心理学、コミュニティ心理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私が大学で担当するゼミは、学生が主体となった対話形式で進めています。毎回「人間関係」をテーマに話題提供者を決めて、仲間関係のつまずき、家族関係のあり方、SNSでのつながりなど、さまざまなことを語り合う場にしています。これからの時代を生きるあなたにとって、「対話」はますます重要になってきます。相手と対等な立場で相手の話を聴き、自分の意見を伝える。これによって自己理解と他者理解を深めていく「対話」の大切さを、ぜひ知ってほしいです。

宇部フロンティア大学に関心を持ったあなたは

宇部フロンティア大学は明治36年創立の伝統を誇る学校法人香川学園が母体で現在、幼稚園、中学校、高等学校、短期大学部、大学、大学院、大学院附属臨床心理相談センター、大学附属文京クリニックおよび宇部環境技術センターからなり、山口県の教育・研究の一大拠点として地域への人材供給を含む地域貢献に取り組んでいます。大学では、学園の創始者(香川昌子)の教育精神である「人間性の涵養と実学重視」を建学の精神とし、「あなたらしさを仕事力に」というキャッチコピーを掲げて、一人ひとりの個性を重視した教育を行っています。