臨床薬学で「アンチエイジング」
臨床薬学とは?
かつての日本では、薬学といえば「薬の研究・開発」が主でした。薬剤師として病院や薬局で患者さんの前に立つ機会が多いにもかかわらず、患者さんと接する意識が希薄だったため、研究重視になっていたのでしょう。しかし1980年頃、アメリカから「薬学は患者さんのためにあるもの」という考えが入ってきます。
この考え方を反映しているのが「臨床薬学」です。臨床薬学では、薬剤師は大きな病院に勤務し、カルテを見たり医師や看護師とコミュニケーションをとったりしながら医療現場に密着し、患者さんと接します。そこで生まれる疑問や問題を解決することが、臨床薬学の研究と位置付けられるようになりました。
老化のメカニズムを解明
臨床では患者さんに薬を投与しても予想と異なる作用が出ることがあります。創薬の研究は、製品化という明確な答えを出すのに比べ、臨床薬学は「1+1=?」の世界です。その「?」を臨床研究で解明し、医療に役立ててきました。
例えば「老化現象」は、最近の研究で、体内で起こるブドウ糖とアミノ酸が反応するメイラード反応が老化を進行させることがわかってきました。
「糖化(とうか)」とも言いますが、この糖化が原因で起こる病気の一つが糖尿病です。糖尿病の患者さんは、健康な人よりも見た目の年齢が高いというデータがあります。糖化が人の皮膚で起こるとしわが増え、骨で起こると骨折しやすくなり、血管内だと動脈硬化、また認知症をも引き起こすと言われます。原因である糖化を起こしにくくする方法を薬学的に明らかにすれば、予防医療につながります。
日常生活に直結する薬学
いま薬学の分野では、農学や医学などさまざまな分野と協力し、効果的なアンチエイジングや健康食品の研究が行われています。薬学を学べば、薬や食品が人にどんな影響を及ぼすか、病気と薬の化学反応やメカニズムがどうなっているか、それらを推測することができます。より良い世の中に近づくため、医療や人の生活に役立つのが臨床薬学なのです。
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先生情報 / 大学情報
同志社女子大学 薬学部 医療薬学科 教授 杉浦 伸一 先生
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