医療を統計で解き明かす 生物統計家の役割
医療分野での統計学の専門家
医療の領域では、臨床研究や各種の検査等で得られた結果が蓄積され、医療ビッグデータとして存在しています。データを効果的にデザイン・収集・分析することで、病気の原因の解明や新しい治療法の確立に寄与すると期待されています。しかし、これらのデータを医学の知識だけで処理することは大変困難であり、医療分野での統計学の専門家である「生物統計家(Biostatistician)」が重要な役割を果たしています。
新たな指標を開発する
生物統計家が加わって実践されている研究の一つが、がんの進行度を示す新たな指標の確立です。現在、大腸がんの進行度はステージ0からIVまでの5段階に分類されています。ステージIIで治療すれば比較的良好な予後が期待できますが、治療後の状況を詳細に分析すると、再発するグループとしないグループに分かれることが明らかになりました。そこで、膨大な医療データの中から2つのグループ分けに関与しそうな因子を最新の統計学の手法で探し出します。研究の結果、たった2つの免疫マーカーの組み合わせがグループ分けに関与している可能性が明らかになりました。今後は、新規の患者さんを対象にした臨床試験を通じて、この組み合わせが予後の予測に関与するのかが解析される予定です。その結果によっては、従来のステージ分類では不十分な患者さんの層別化も可能になるかもしれません。
ヘルスデータサイエンスとは
これらの研究成果は、がん治療の改善に貢献することが期待されています。近年では、医療や保健などのヘルスケア領域において、統計学的手法を用いた分析の重要性が増しており、ヘルスデータサイエンスという概念が広がっています。ヘルスデータサイエンスは、医療系ビッグデータを解析する仮説発見型アプローチを指し、新薬の開発や疾患の解明、日々の健康の維持など、ヘルスケア全体に大きく寄与する可能性を秘めています。
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