水素からエネルギーを生み出す燃料電池の最前線
燃料電池自動車が高いワケ
燃料電池自動車は、タンクに詰めた水素を空気中の酸素と反応させ、発生した電気を動力源にします。燃料電池は高分子膜をプラスとマイナスの電極で挟んだもので、自動車用には300個以上直列に接続されています。すでに一回の水素補給でガソリン自動車並みの距離の走行が可能で、排出ガスは水のみです。
問題は電極に触媒として白金を使用していることです。白金を使わないことが理想ですが、代替技術はまだ出力が不十分で、白金の量を減らす方が現実的です。トータルで30~50グラム使われている白金を、ガソリン自動車の排ガス触媒と同程度の5グラムにできれば車体価格もかなり引き下げられます。
白金の量を減らすには?
発電を繰り返すと、白金粒子同士が集まって大きくなります。小さい粒子は表面積が大きく、大きな電流を出せるため、粒径を安定に保つ必要があります。また白金-コバルト合金の表面積当たりの電流が白金の数倍大きくなることが見つかりました。ただし発電を繰り返すと、これまでの合金からはコバルト成分が溶け出して活性が低下していきます。そこで、合金表面を数原子の厚さの白金で包んだ新しい触媒が開発されました。活性と粒径が安定に保たれるため、白金の量を減らすことが可能になりました。なお、この触媒は燃料電池のプラス極にもマイナス極にも使えることがわかりました。
電気を水素に変える!
水素は再生可能エネルギーの分野でも注目されています。太陽光や水力、風力発電は発電量に大きな変動があります。蓄電池にためればよいのですが、蓄電池は充電状態で長く置くと劣化するため、長期的な保存には向きません。大規模な電力を長期的にためるには電気を別の物質に置き換えた方がよく、そのターゲットが水素なのです。電気を水素に変えて貯蔵する方法はすでに一部、実用化されていますが、いずれの方式も効率やコスト面で問題を抱えています。再生可能エネルギーで作った電気で効率よく水素を作って貯蔵し、必要時に燃料電池で効率よく発電することが今後の課題です。
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先生情報 / 大学情報
山梨大学 工学部 応用化学科 教授 内田 裕之 先生
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