講義No.07100 機械工学 理工系その他

ものの流れを調べるシミュレーション技術で、社会に貢献する

ものの流れを調べるシミュレーション技術で、社会に貢献する

最適な燃料電池を開発する

地球の気候は温暖化に向かっています。そのため、二酸化炭素を排出しない電気自動車など、環境に配慮した科学技術の開発が求められています。電気自動車の一種である燃料電池自動車は、水素と酸素の化学反応で電気を発生させる「燃料電池」で動きます。燃料電池の中には、カーボンで作られた紙で仕切られた流路があり、そこを空気と水素が流れています。一見、黒い紙にしか見えない、このカーボンペーパーを顕微鏡でよく見ると、表面や内部に細かい穴が開いています。このようなものを多孔質と言います。実は私たちのまわりのものは、多くが多孔質でできています。

流体の動きをコンピュータで可視化する

多孔質の空間は入り組んでおり、複雑な形状をしています。イメージしやすいものはスポンジです。多孔質における流体(液体、気体といった流れているもの)の動きは複雑なものになります。しかし、燃料電池に使われているカーボンペーパー内の水素や酸素の複雑な流れを解析することができれば、最適な燃料電池を設計することが可能です。多孔質内部の流れは目には見えませんが、コンピュータシミュレーションで見ることができます。車や飛行機などに比べ、多孔質は形状が複雑すぎて流体のシミュレーションは、とても難しいものになります。しかし、多孔質の流れに有効な手法は、ほかのいろいろな分野に応用できます。

世の中に役立つ技術へとつながる

例えば、人体内部の形は、複雑で個人によって異なります。さらに腫瘍などがあれば、また違ってきます。CT(コンピュータ断層撮影)写真を元に、呼吸器や血管の形状がわかれば、シミュレーションにより腫瘍を取ったあと、呼吸や血流がどうなるかということが手術の前に予想できるのです。こうした社会に貢献できる技術を高めていくことが、流体シミュレーション研究の大切な役割なのです。

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先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 工学部 機械工学科 教授 須賀 一彦 先生

大阪公立大学 工学部 機械工学科 教授 須賀 一彦 先生

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機械工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

大阪府立大学では、世界を舞台に社会をリードする人材を育てるべく、教育と研究が一体となった環境で学生を育てることを大学全体の目標にしています。私たちはわが国の産業だけにとどまらず、世界の科学技術の進展に役立つ人材を育成しているのです。
特に、地球温暖化が深刻な21世紀は、エネルギー革命が必要です。私の研究室ではこのエネルギーの輸送現象について、世界最先端のコンピュータシミュレーションを使って、学生たちと日夜研究しています。あなたも私たちの仲間に加わってみませんか。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大阪公立大学に関心を持ったあなたは

2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。