講義No.08839 化学

物質の新たな性質を解明する「超臨界状態」の研究

物質の新たな性質を解明する「超臨界状態」の研究

メソスケールとは

普段、私たちはマクロのスケールで物質を見ています。マクロスケールでは、物質は固体・液体・気体の3つの状態でとらえられます。これに対して、物質を原子やイオンのレベルで見ることをナノスケールと言います。ナノスケールでは、結晶体の中の原子やイオンがどのように並んでいるのかがわかります。
マクロスケールとナノスケールの中間のスケールを、「メソスケール」と呼びます。このスケールで見ると、物質の新たな側面が見えてきます。

物質の分子が不均一な「ゆらぎ」の状態

ナノスケールやメソスケールでは、分子の集合の仕方の不均一な様子を見ることができます。物質は、ある場所では分子間の距離が近く、「密」になっているのに、違う場所では分子間の距離が離れていて「粗」になっていたりします。そうした分子の「粗密の状態」を見ることができるのが、ナノスケールやメソスケールです。この分子間が粗密の状態、すなわち「不均一な状態」を「ゆらぎ」と呼んでおり、「ゆらぎ」が最も大きくなるのが、「超臨界」という状態です。「超臨界」とは、液体と気体の中間の状態ということができます。
物質が超臨界状態になると、どのような「ゆらぎ」を見せるのか、それによってどんな性質を持つのかについての研究が進められているのです。

水溶液の超臨界状態での溶質と溶媒の変性

現在では、単体の物質だけでなく、水溶液の「ゆらぎ」についても研究が進んでいます。例えば、水とエタノールが混ざった溶液が超臨界状態になったときに、水の分子とエタノールの分子がどのような「ゆらぎ」を見せ、それによってどんな性質を帯びるのか、ということです。
それが水と油の場合なら、通常では溶け合いませんが、超臨界状態になると完全に溶け合います。逆に、今まで溶け合っていたものが、超臨界状態では溶け合わない場合があることもわかってきました。
超臨界状態の研究によって、これまで知られていなかった物質の新たな性質が少しずつ明らかになっています。

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先生情報 / 大学情報

千葉大学 理学部 化学科 准教授 森田 剛 先生

千葉大学 理学部 化学科 准教授 森田 剛 先生

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物理化学

メッセージ

私は、分子の集合状態やナノサイズの構造に必ず存在する不均一な状態に興味があり、研究をしています。キーワードは「ゆらぎ」です。「ゆらぎ」とは、平均からのズレを表し、ホタルのまたたきや楽曲にも含まれる身近なもので、不均一さを持つ物質の理解には重要な概念です。
この研究では独自の実験装置の開発が必要になることもあり、装置の材質を選んだり、設計、強度計算をしたりもします。こうした「ものづくり」の技術も大切にする中で、独創的な研究が進められます。このようなオリジナリティのある研究にあなたも参加しませんか。

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