あなたの意見が最先端の研究に生かされる
研究に協力する人の存在
病気の治療方法や薬を開発するとき、研究者の力だけでは足りません。患者や一般市民の協力が必要です。しかし人類の歴史には、研究に協力した患者・市民が過度、または不当な負担を強いられる事例が繰り返し登場しています。現在でもなお、悲惨な事例が発覚することもあります。こうした事態を防ぎ、本当に社会に役立つ研究を行うには、研究者と患者・市民が同じ目線に立ってコミュニケーションを行い、一緒に研究を作り上げることが不可欠です。生命倫理や科学技術社会論といった学問分野では、患者・市民の研究への参画のあり方が大きな研究テーマになっています。
患者・市民が研究について考える意義
例えばある研究のために、重い病気の患者を週に1度、研究機関に呼び寄せるとします。それが患者にとって大きな負担であっても、「研究のため」と言われると断れないかもしれません。その上、患者が無理をすることで研究結果がゆがむことも考えられます。研究チームに第三者が加わり、「このやり方は負担が大きすぎる」と研究者に伝え、より良い方法を探ることで、こうした事態は防げるでしょう。また、研究者は病気に対する知識はあっても、その病気を患っている人の生活を知っているとは限りません。「いつになるか分からない病気の完治法の研究よりも、まずは1メートルだけでも歩けるようになりたい」といった患者の思いが届けば、研究がより患者に寄り添ったものになる可能性もあるのです。
患者・市民の声を生かす場づくり
研究者だけで考えるのではなく、患者・市民たちの意見が生かされれば、研究に新たな価値が生まれるかもしれません。社会にとってより有益で身近な研究が、科学的により有意義な研究が、そして両方を兼ね備えた研究が進むかもしれません。国内では、研究者と患者・市民が対話し、研究のあり方を考える企画が開催され出しています。オンラインの場も活用して、最先端の研究に患者・市民の声を生かす場や機会を増やし、また、より良い方法を探っていくことが求められています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
千葉大学 国際教養学部 国際教養学科 准教授 東島 仁 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
生命倫理、科学技術社会論先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?