多くなると何かが変わる!? 原子や電子のふるまいの不思議
物質の不思議は素粒子だけではわからない
物理学は「少数の基本法則と少数の基本粒子がこの世のすべてを形作っている」と考える学問です。しかし、少数の基本法則と基本粒子しかないと考えるなら、なぜこんなに豊かな事象が私たちの身の回りにあるのでしょうか?
例えば、空が青く木々が緑に生い茂るのはなぜか、小川を流れる水はなぜ蒸気になったり凍ったり姿を変えるのかといった不思議は、物質の最小単位である素粒子を見つめてもわからないのです。
原子や電子が集まると何かが変わる
こうした疑問を解く鍵は原子や電子のふるまいにあります。原子を構成する陽子、中性子、電子は素粒子の一つに過ぎませんが、膨大に集まるといろいろな現象が起こります。これをノーベル物理学賞学者のアンダーソンは、「多くなると何かが変わる─More is different」と表現しました。一つひとつの原子や電子のことがわかってもこの世界のすべてを理解できるわけではない、たくさん集まるとすべてが変わる、という意味です。私たち身の回りの物質は、1cm立方の角砂糖ほどの中に、実に10²³個を超える原子や電子がひしめき、お互いがさまざまに相互作用することで形作られているのです。
水と氷の違いは原子や電子の並び方
例えば水(H₂O)は、H₂Oという水分子が集まって初めて水か氷かがわかります。水分子1個では、水か氷かわかりません。液体である水の場合は、分子(原子や電子)がぎゅうぎゅう詰めの状態でも分子は動いていますが、固体である氷になると分子は規則正しく並びます。しかも氷の分子間の距離は、水の分子間の距離よりも遠くなります。それなのに固まるのは、膨大な数の原子や電子が集まったときのふるまいの不思議です。原子や電子の集まり方が異なると、物質は驚くほど異なる性質を持ちます。それは人間が集まったとき、地域や気候風土が違うと全く異なる顔を持つ国家ができることに似ているのではないでしょうか。
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