薬の添加剤のリスクは? 効果的で安全な薬の使用を考える
医薬品添加剤で起きるアレルギー
食品添加物は、食べ物を長持ちさせたり、食べ物の形や味を調えたりするために使用されます。同様に、薬にも飲みやすさ、扱いやすさ、安定性、保存性などを高めるために「医薬品添加剤」が入っています。
添加剤として使用できるのは人体に無害な物質ですが、アレルギーを起こす可能性がゼロではありません。例えば、添加剤としてよく使われる「乳糖」は、牛乳・乳製品アレルギーの人が取るとアレルギー反応が起きるリスクがあります。どんな添加剤が入っているかは、同じ薬でも規格によって違ったり、先発品と後発品(ジェネリック)で違ったりするため、医療現場での使用には注意が必要です。
症例から安全対策を考える
子どもの気管支ぜんそくでよく使われるステロイド薬の中にも、乳糖が入っている薬剤があります。実際に、この薬剤によってアレルギー反応が起きた男児の症例があります。男児は強いアレルギー症状が出ましたが、適切な治療によって回復し、その後にそれが牛乳・乳製品アレルギーであることが判明しました。症例からアレルギーが起きてしまった背景や理由を分析するとともに、今後の予防策についても研究が進められています。このような症例研究報告は、薬に関わる人たちの添加剤への安全意識を高めることにつながります。
データベースから薬の使用の実態を調査
また、小児の薬のうち乳糖が入っているものの数や種類、実際にどのような患児(小児患者)に使われているかといった使用の実態を、厚生労働省のデータベースを使って調査する研究も進められています。小児の薬で乳糖が含まれるものは約930種類あり、ぜんそくやてんかんの薬に多いことがわかっています。
「臨床薬剤学」は、このように実際の症例やデータベースから医療現場における薬の使用の問題点を取り上げて、解決策を考えていく分野です。患者のために効果的で安全な薬物療法を行うことができる薬剤師の育成を大きな目的としています。
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