講義No.14509 薬学

薬の添加剤のリスクは? 効果的で安全な薬の使用を考える

薬の添加剤のリスクは? 効果的で安全な薬の使用を考える

医薬品添加剤で起きるアレルギー

食品添加物は、食べ物を長持ちさせたり、食べ物の形や味を調えたりするために使用されます。同様に、薬にも飲みやすさ、扱いやすさ、安定性、保存性などを高めるために「医薬品添加剤」が入っています。
添加剤として使用できるのは人体に無害な物質ですが、アレルギーを起こす可能性がゼロではありません。例えば、添加剤としてよく使われる「乳糖」は、牛乳・乳製品アレルギーの人が取るとアレルギー反応が起きるリスクがあります。どんな添加剤が入っているかは、同じ薬でも規格によって違ったり、先発品と後発品(ジェネリック)で違ったりするため、医療現場での使用には注意が必要です。

症例から安全対策を考える

子どもの気管支ぜんそくでよく使われるステロイド薬の中にも、乳糖が入っている薬剤があります。実際に、この薬剤によってアレルギー反応が起きた男児の症例があります。男児は強いアレルギー症状が出ましたが、適切な治療によって回復し、その後にそれが牛乳・乳製品アレルギーであることが判明しました。症例からアレルギーが起きてしまった背景や理由を分析するとともに、今後の予防策についても研究が進められています。このような症例研究報告は、薬に関わる人たちの添加剤への安全意識を高めることにつながります。

データベースから薬の使用の実態を調査

また、小児の薬のうち乳糖が入っているものの数や種類、実際にどのような患児(小児患者)に使われているかといった使用の実態を、厚生労働省のデータベースを使って調査する研究も進められています。小児の薬で乳糖が含まれるものは約930種類あり、ぜんそくやてんかんの薬に多いことがわかっています。
「臨床薬剤学」は、このように実際の症例やデータベースから医療現場における薬の使用の問題点を取り上げて、解決策を考えていく分野です。患者のために効果的で安全な薬物療法を行うことができる薬剤師の育成を大きな目的としています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

横浜薬科大学 薬学部 臨床薬学科 教授 渡邊 徹 先生

横浜薬科大学 薬学部 臨床薬学科 教授 渡邊 徹 先生

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医療薬学、病院薬剤学

メッセージ

自分が好きなことは何か考えることは、進路を選ぶときの入り口です。自分が好きなことから、大学で学びたいことを見つけてください。もし医療系の進路に進みたいなら、「社会に出たとき何をしたいのか」「どんな仕事につきたいのか」も大切です。医療系の大学はほとんどの場合、「学部・学科=将来の職業」だからです。オープンキャンパスでさまざまな学部・学科を見ることが、どんな仕事があるかを知る機会になります。いろいろ見聞きした中で、薬学部を、そして本学を選んでもらえるとうれしいです。

横浜薬科大学に関心を持ったあなたは

全国初の6年制薬科大学として開学した本学は、患者一人ひとりの苦しみを理解できる”惻隠の心”と”心の温かさ”を育てる教育を実践する。学長にはノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈先生が就任。世界的な科学者の視点で個性教育を行うとともに、強く薬剤師を志す人の努力にはサポートを惜しまない風土が強みである。