患者の治療を科学的にサポートし、命を守る「薬剤師」
血液検査で体内の薬剤の状態を把握する
医療現場において、薬剤師は最適で安全な薬物治療が行われるように患者を守る存在です。薬物投与後に現れる薬効には、同じ用量でも個人差があります。治療効果を高めて、副作用を軽減するために、血中の薬物の濃度をモニタリングし、体内の薬物の状態を知ることがあります。この「薬物動態」(Therapeutic Drug Monitoring)という知識が薬剤師の武器となります。
体内で薬物はどのように動いているのか
薬物治療で効果を得るには、薬物が特定の部位に到達し、一定時間にわたって効果を発揮することが求められます。注射による投与では、薬物がすぐに血中に入り、時間の経過とともに濃度が下がっていきます。口から飲む場合は、胃や腸での吸収や肝臓での代謝なども同時に起きるため、注射よりゆっくり効果が現れます。実は、この体の中の薬の動きは、計算式で割り出すことができます。また、他の薬があると、効き目が強くなったり、弱くなったり変化することもあります。これらを総合的に判断して、薬の使い方を考えるには、「薬物動態」の知識が必要です。臨床薬学において、薬の体の中の動きを知り、患者さんの個人差も考えながら、どの薬をどのように使うかを導き出すのです。
薬剤師が治療方針を左右することも
さらに、患者の肝臓や腎臓などの疾患の有無、薬の飲み合わせなども複雑に影響を与えます。投与の量やタイミングを間違えると、薬が過剰になる場合もあるのです。「薬物動態」は、時に治療を左右します。例えば、脳に衝撃を受けた患者が、薬で眠っているのか、脳のダメージで目を覚まさないのかわからないときがあります。そこで、薬が効いている時間を計算して目が覚める時間を予測します。それを過ぎても目覚めない場合は、脳のダメージが原因と考えられ、その後の治療方針を決めていくことになります。このように今、医療現場では患者の治療と健康をサポートできる薬剤師が求められているのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
愛知学院大学 薬学部 医療薬学科 教授 河原 昌美 先生
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