1台のコンピュータを何台分にも活用できる「仮想マシン」技術とは?
余力を有効活用して「仮想」コンピュータを作る
大手企業や研究機関などでは、数百~数千台規模でコンピュータが使われています。当然、電気代も設置スペースもかなりの規模になります。その一方で、近年のコンピュータは非常にハイスペックなので、平均すると10~20%ほどの能力しか使っていないと言われています。
そこで、コンピュータ内の使われていない領域をいくつかに分割し、それぞれの領域に「VM(バーチャルマシン=仮想マシン)」を作る手法が用いられるようになりました。「親」となるコンピュータに余力があれば、1台の中に何台ものVMを作ることができるので、台数や設置スペースを減らすことができます。
コンピュータ操作をとめずにメンテナンス可能
企業などでは、WindowsやMac以外にもLinux、BSDなどのOS(オペレーティングシステム)が使われており、特定のOS上でしか動かないアプリケーションが多数あります。そのため、複数のOSが必要な職場では、その分の台数のコンピュータが必要です。しかしVMなら、同じ「親」の中にあっても個々のマシンは独立して稼働するので、複数の異なるOSを同時に立ち上げられます。
コンピュータ内の部品を交換しなければならないときでも、ネットワーク経由でVMを別の「親」に移動させておけば、操作を中断せずにメンテナンスできます。
セキュリティ分野でも活躍するVM技術
近年、コンピュータウイルスによる犯罪が社会問題化しています。さまざまなセキュリティソフトがありますが、最近はコンピュータに侵入後、まずセキュリティソフトを無効化してから「悪さ」をするウイルスも登場しています。そこで、VMの外側にセキュリティソフトをインストールし、ウイルスに感染する可能性があるVMを監視させる技術が研究されています。ただし、この機能を悪用されると、VMに保存している重要な情報が漏えいする可能性もあるため、そのリスクを減らすシステムの研究も、同時に進められています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
九州工業大学 情報工学部 情報・通信工学科 教授 光來 健一 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
情報工学、情報セキュリティ学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?