デジタル情報をノイズから守る! 数学の符号理論
正しい情報が送れる仕組み
例えば、LINEで友だちに「了解」とメッセージを送るとします。メッセージは0と1の信号に変換されて送られますが、もしも途中でほかの信号と混じって0と1が置き換ってしまうと、相手に間違ったメッセージが届くかもしれません。それを回避して正しい情報を送受信するために、数学の「符号理論」を用いた、「情報の誤りを検出・訂正する仕組み(誤り訂正符号)」が使われています。送りたい情報に、数学的な決まりに従った余分な情報を付け加えて符号化する技術です。簡単な例では、0のあとに00を、1のあとに11を付け加えて送るというものです。01と送りたい場合には000111となります。これがノイズで010110と変わってしまったとしても、正しい情報は01だと確率的に判別できます。
高速かつ効率的な通信を
しかしこの方法だと送る情報量が3倍になるため、コストがかかり通信速度も遅くなってしまいます。より効率よく高速な誤り訂正符号が考えられており、その1つが「ハミング符号」です。0と1からなる4つの情報の信号x1、x2、x3、x4に対し、x5=x1+x2+x4、x6=x1+x3+x4、x7=x1+x2+x3の3つを定めて情報の誤りをチェックする方法です。4つの信号に対し余分な信号は3つで済みます。
最新の誤り訂正符号は「行列」を使ったもので、数学的に「よい」行列を作る研究が行われています。
幅広い分野で使われる符号理論
誤り訂正符号は、スマホなどのデジタル通信だけではなく、コンピュータのハードディスクやブルーレイディスクなどのデジタル記録装置にも使われています。2次元コードも同じ仕組みで、1/4程度が破れたり汚れたりしても、正確な情報を読み取れます。
また、今後、量子コンピュータが実用化されるとさまざまな暗号が簡単に破られてしまうおそれがあります。一方、誤り訂正符号を使った暗号は量子コンピュータにも対抗しうるものと期待され、研究が進められています。
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