AIに負けない総合診療専門医のスキルとは?
これからの社会で求められる医師像とは
あなたが医学部に入学し、医師となって一人前になるのは、免許取得後10年、すなわち2035年ごろになります。その頃、医療分野でもAIの進歩によって大きな変化が予想されます。ではAIには手の出せない、医師に求められる能力とは、どのようなものでしょうか。その一つは患者さんから巧みに情報を引き出し、状況を統合的に瞬時に判断し、臨機応変に対応できる能力です。これらは、細やかなコミュニケーション能力、そしてすぐれた観察力や判断力に裏打ちされています。患者さんを一人の人間としてとらえるには、理系だけでなく、多分に文系的能力も必要とされます。
高度な専門医を育ててきた日本の医療界
日本では専門分野を極めたエキスパート医を数多く育成してきました。しかしエキスパート医であればどのような医療現場でも活躍できる、というわけではありません。人口減少や高齢化がすすむと、一人の患者さんが抱える多様な健康問題に対応する能力を持った医師が求められます。予防医学や健康啓発も重要となります。このように全人的な視点から総合的に診療する能力をもった医師、すなわち総合診療医がいてこそ、エキスパート医も能力を発揮できるのです。日本ではこれまで、専門性を持った医師が地域で経験を積みながら総合診療医としての役割を果たしてきました。これからは「総合診療専門医」という新たな仕組みの育成が始まります。
総合診療専門医が求められる時代
医師免許を取得すると多くの医師が比較的規模の大きな医療機関で臨床研修を行います。しかし将来的には多くが中規模以下の最前線の医療機関を職場としていきます。このようなプライマリ・ケアの現場で最もニーズが高まるのは総合診療専門医だと予測されています。医療の進歩は新しい検査法、新しい診断機器、そして新しい治療薬や治療器具をもたらします。これらを適切に扱うためには、AIでは取って代わることのできない、患者さんの全体を診る力、すなわち「丸腰で戦える力」を備えた医師が不可欠なのです。
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先生情報 / 大学情報
高知大学 医学部 医学科 教授 瀬尾 宏美 先生
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