予防歯科臨床に必要な力―患者とめざす「病気にならない」習慣
予防歯科医療へのパラダイムシフト
あなたは歯科医療、例えば虫歯(う蝕)を治すというと「削る・詰める・抜く」というイメージを持っていませんか? 確かにこのような考えが中心の時代もありましたが、2000年頃からその認識は劇的に変化しました。それは、「予防歯科医療」へのシフトです。病気になる原因を科学的に把握し、原因やリスクを患者さんに論理的かつわかりやすい言葉で説明して、同意を得た上で、病気にならない習慣づくりを一緒にめざすのです。
情報力・提案力・指導力・技術力、そして伝える力
予防歯科学は、虫歯や歯周病などの原因や予防に関する研究と患者さんへの診療、つまり研究と臨床が直結していることが特長です。ですから、臨床の現場では科学的な専門知識から患者さんとのコミュケーション能力まで、多面的な力が求められます。
まず、患者さんは一人ひとり症状が違うので、個々の状況に応じた「情報収集」が必要になります。リラックスして本音で話せるような、環境もつくらなければなりません。そして、その情報を基に「リスク分析」を行い、気になる症状を放置すればどうなるかなどのリスクを伝え、その人に合った「予防プログラムの提案」を具体的に行います。アドバイスを実行に移してもらうためには、患者さんの行動変容につながる「口腔衛生指導」も必要です。そして、これら一連の流れを、専門家の「手技・技術」で支えていきます。虫歯に関わる歯肉縁上のプラーク(歯垢)や歯周病に関わる歯周ポケットのバクテリアを定期的に除去し、バランスよくコントロールできるかが重要になるのです。
自分の歯で生涯食べられるように
近年では、キシリトールやエリスリトールなど、機能性食品の菌を抑制する効果(予防効果)の研究や製品化なども注目を集めています。
予防というものは、決して目立つ存在ではありません。しかし、健康な口腔内環境を守り自分の歯で生涯食事を楽しむことができる人を増やすという、歯科医師がプライドを持って挑む、やりがいのある分野なのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
大阪大学 歯学部 歯学科 予防歯科学講座 教授 久保庭 雅恵 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
歯学、予防歯科学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?