ミクロとマクロの中間で起きていることとは?
原子や分子は集まると動きが変わる
原子や分子といった小さなものの物理法則は、かなり理解が進んでいます。また、反対に大きな存在、例えば宇宙に関しても観測技術が進み、さまざまなことがわかるようになりました。しかし、原子や分子が比較的多数、例えば数十個から数十万個集まったときの運動に関しては、まだわからないことが多いのです。
原子や分子は単体だと量子力学に従い、粒子であり、波でもあるという法則の下で運動しています。複数集まると互いに相互作用します。そして、波の性質を持っているため、一般に多くの異なる状態の重ね合わせが可能であり、原子や分子単体の動きとは一致しないことが多いのです。
ナノテク分野への貢献に期待
原子の数を考えるベースとなるのは6.0×10²³個、いわゆるアボガドロ定数ですが、ターゲットとなるのは原子が比較的小さな数集まった集団です。これがどのように運動しているかがわかると、ナノテクノロジー分野への貢献が見込まれます。
例えば、高速で小型のCPU(中央演算処理装置)を作るには、限られた領域にできるだけ多くの性能のいい素子を入れる必要があります。そして、小さいけれどエネルギー効率よく電流が流れる素子を作るには、まずミクロとマクロの中間領域がどのような状態になっているかを把握しなければならないのです。
原子の運動を観測する装置の開発
近年、観測や制御の技術は目覚ましい発展を遂げています。その代表とも言えるのが「冷却原子気体」で、原子の集合を周囲から孤立させて、観測や操作を行うことができます。この気体を使い、原子や分子がどのようにして非平衡状態から熱平衡に近づいていくか、観測が行われています。熱平衡状態にあるものがどういう性質を持っているかは理解が進んでいるのですが、非平衡状態についてはよくわかっていないことが多いため、これも解き明かさなければならない課題の一つです。小さなものを操作し、観測し、制御する装置の開発と並行し、それを実現させるための思考実験も行っていく必要があります。
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先生情報 / 大学情報
成蹊大学 理工学部 理工学科 講師 門内 隆明 先生
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