磁気で偽造品を判別 原子レベルの鑑定技術で日本の価値を守れ!
由来をどうやって見分ける?
近年、日本の食品や農産物は海外でも高く評価されています。輸出額は年々増加の一途をたどっていますが、海外での市場拡大における問題の一つが偽造品です。例えば日本酒の純米酒はコメと米こうじのみを原料とするため、純米酒に含まれるエタノールは100%コメ由来です。ところが、サトウキビから作られる安価な醸造アルコールも同じエタノールであるため、純米酒に混ぜて偽造されると、人間の舌では違いを感知できません。正統に作られた日本の純米酒の価値と信頼を守るために、科学的な日本酒の鑑定方法が必要です。
原子レベルの違いを検出
由来が違うというだけで、物質的には全く同じエタノールを見分けなければなりません。それには「核磁気共鳴分光法」が用いられます。核磁気共鳴分光法とは磁気の力を利用して原子の状態を観測する技術で、調べたい物質の原子や分子の種類や量、結合状態などがわかります。
純米酒の鑑定で着目するのは、エタノールに含まれる炭素や水素の安定同位体の比率です。一般的に植物に含まれる同位体の比率は、光合成のサイクルの違いに基づき、植物の種類によって異なることがわかっています。つまり、核磁気共鳴で日本酒のエタノールに含まれる同位体の比率を調べれば、それがコメ由来かサトウキビ由来かを判別できるのです。
ヨーロッパではすでに、偽造ワインの流通を防ぐために核磁気共鳴の鑑定書を発行した例があります。日本酒についても、核磁気共鳴の鑑定結果をラベリングするなどの社会実装が目標とされています。
日本のブランド価値を守れ
さらに、同じ原料を使っていても醸造所が違えば同位体の含有率が違うというデータが得られており、その理由を解明するための研究が進められています。
核磁気共鳴分光法を使った日本酒の鑑定技術は、お茶や野菜などその他の日本の食品への応用も可能だと考えられます。グローバル市場で日本のブランド価値を守るための戦略の一つとして期待されています。
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