人間の視線を分析すれば、交通事故を防げるか?
人間はどこを見ているのか?
人間の視線には一定の傾向があります。小さなスマートフォンの画面でも、多くの人は基本的に左上から見る傾向があり、「Fの法則」「Zの法則」などと呼ばれています。バレーボールやサッカーといったスポーツの場合、優れた選手ほどボールを見ている時間が短いことがわかっています。それ以外の時間に相手プレイヤーの動きなどを観察し、自分にボールが来たときの行動に役立てているのです。これを自動車の運転に照らし合わせると、交通事故を起こしにくい人ほど周囲に気を配り、衝突するようなものが近づいてきていないか、情報を集めていると言えます。
運転は行動が結果に表れにくい
視線の癖付けはある程度、訓練によりできるようになります。見たものについて考え、行動に移していく流れが自然にできるようになれば、結果もともなっていきます。ただし自動車の運転の場合、スポーツと違い、行動が結果に表れにくいところがあります。どんなにスピードを出しても衝突する対象がなければ交通事故は起こりません。注意散漫な運転をしても事故を起こさない限り、悪い意味での成功体験となり、やるべきことがどんどんおろそかになります。「いつも通り運転していたはずなのに事故を起こしてしまった」、というケースには、こうした理由があるのです。
結局、事故を防ぐのは人間
人為的なミスを防ぐため、自動車に自動停止する機能が実装されることが当たり前になりました。これも、いいことばかりではなく、なぜ自動車がそういう挙動をしたのかを理解していないと、運転時のストレスにつながります。さらに、自動運転が一般化した場合、人間が自動運転に依存してしまう懸念もあります。人間は楽な方向に流されるため、危険の際に自動で停止してくれるならば自分は注意していなくてもいい、と考えるからです。
完全な自動化はまだ難しいですが、それは機械には判断が難しい状況があるということです。言い換えれば、そのような状況でも事故を防ぐには、柔軟に判断できる人間の運転が必要であると言えます。
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成蹊大学 理工学部 理工学科 准教授 竹本 雅憲 先生
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