講義No.09012 理工系その他 人間科学

人間の視線を分析すれば、交通事故を防げるか?

人間の視線を分析すれば、交通事故を防げるか?

人間はどこを見ているのか?

人間の視線には一定の傾向があります。小さなスマートフォンの画面でも、多くの人は基本的に左上から見る傾向があり、「Fの法則」「Zの法則」などと呼ばれています。バレーボールやサッカーといったスポーツの場合、優れた選手ほどボールを見ている時間が短いことがわかっています。それ以外の時間に相手プレイヤーの動きなどを観察し、自分にボールが来たときの行動に役立てているのです。これを自動車の運転に照らし合わせると、交通事故を起こしにくい人ほど周囲に気を配り、衝突するようなものが近づいてきていないか、情報を集めていると言えます。

運転は行動が結果に表れにくい

視線の癖付けはある程度、訓練によりできるようになります。見たものについて考え、行動に移していく流れが自然にできるようになれば、結果もともなっていきます。ただし自動車の運転の場合、スポーツと違い、行動が結果に表れにくいところがあります。どんなにスピードを出しても衝突する対象がなければ交通事故は起こりません。注意散漫な運転をしても事故を起こさない限り、悪い意味での成功体験となり、やるべきことがどんどんおろそかになります。「いつも通り運転していたはずなのに事故を起こしてしまった」、というケースには、こうした理由があるのです。

結局、事故を防ぐのは人間

人為的なミスを防ぐため、自動車に自動停止する機能が実装されることが当たり前になりました。これも、いいことばかりではなく、なぜ自動車がそういう挙動をしたのかを理解していないと、運転時のストレスにつながります。さらに、自動運転が一般化した場合、人間が自動運転に依存してしまう懸念もあります。人間は楽な方向に流されるため、危険の際に自動で停止してくれるならば自分は注意していなくてもいい、と考えるからです。
完全な自動化はまだ難しいですが、それは機械には判断が難しい状況があるということです。言い換えれば、そのような状況でも事故を防ぐには、柔軟に判断できる人間の運転が必要であると言えます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

成蹊大学 理工学部 理工学科 准教授 竹本 雅憲 先生

成蹊大学 理工学部 理工学科 准教授 竹本 雅憲 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

人間工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

どんなに高性能な製品も、結局は人間が使うものです。したがって何を生み出すにもまず、人間のことを中心に考えなくてはいけません。人間工学は理系の学問ですが、扱う対象が人間であるため、心理学的要素も入ります。人間がとる行動の原因を知りたければ、興味深い分野となるでしょう。
アイトラッカー(視線計測装置)に代表されるように、人間の行動のデータを取得する方法は高度化しています。あとは、得られたデータをどう料理するかです。使う人の立場になって考え、さまざまな製品の開発に役立てていくことが人間工学の本質です。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

成蹊大学に関心を持ったあなたは

成蹊大学は、経済学部・経営学部・法学部・文学部・理工学部からなる総合大学です。文系・理系のすべての学生が4年間、緑豊かな吉祥寺のキャンパスで過ごすので、所属学部以外の友人との交流や学年を越えたネットワークづくりも可能です。また、先生との距離が近く学生一人ひとりの個性を尊重する少人数教育やキャリア教育が充実しています。さらに、2020年度より、各自が自分の興味関心やニーズに沿った学習を進められるよう副専攻制度を設けます。詳細は成蹊大学ホームページをご確認ください。