講義No.09046 物理学

まだ物理学で解明されていない「粉粒体」の不思議な動き

まだ物理学で解明されていない「粉粒体」の不思議な動き

箱に砂を入れて傾けるとどうなるか

箱に砂を入れて傾けると、ある角度までは動かず同じ状態ですが、それを過ぎると砂は滑り出します。このぎりぎりの角度を安息角(あんそくかく)と言います。ちなみに、同じことを水で行うと傾けた瞬間に水面は斜めになります。この現象は、安息角までは固体、滑り出した瞬間に液体になると考えることができます。
水の場合だと、どのように動くかは「流体の方程式」で計算できますが、砂の場合はこれと同じ方程式で解くことができません。では、砂の動きを説明する方程式があるのかというと実はありません。方程式を作るには、まず比重やサイズ、質量などの物理量を定める必要がありますが、それさえもわかっていないのです。

重力に反して重くて大きな粒子が上に集まる粉粒体

砂のようなつぶつぶの集まりを粉粒体(ふんりゅうたい)といいます。粉粒体は食品、薬など身の回りにたくさんあります。工業分野では粉粒体が原材料の75%以上を占めると言われています。粉粒体は不思議な振る舞いをします。
例えばブラジルナッツ効果というものがあります。ブラジルナッツというミックスナッツの缶を振ると最も重くて大きいブラジルナッツが上に集まってくるのです。この現象は重力に反するので注目されました。

物理で解明されていない自然現象はまだまだある

また、砂山を、「ザルで砂を振りながら落とす方法」と「漏斗(ろうと)で狭い穴から落とす方法」とで作るとします。前者は安息角を保ちながら高くなり、後者は同じ安息角の円錐が大きくなります。完成形は同じに見えますが、内部構造が違います。底面の圧力を測ると、前者は頂点の真下が圧力最大ですが、後者はそうはなりません。その理由を探るには砂山がどう積まれたかを定量化する必要がありますが、それができません。
宇宙の仕組みが明らかになり、物質の基本単位である素粒子が発見されるなかで、こんな身近な現象の物理法則でさえも解明されていないのです。

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九州大学 共創学部 共創学科 准教授 稲垣 紫緒 先生

九州大学 共創学部 共創学科 准教授 稲垣 紫緒 先生

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物性物理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

身の回りにはまだ解明されていない自然現象が意外と数多くあります。私が研究している粉粒体もその一つです。なぜ、どうしてという問いを自ら見つけ、ものの理(ことわり)を明らかにする楽しさや美しさが物理にはあります。また、課題を見つけ解決方法を試行錯誤し、自ら問題を解決しようという姿勢は物理に限らず、社会に出てからも役に立つでしょう。答のある問題を解くのは高校までです。大学では自ら問題を見つけ、何事にも挑戦する姿勢と力を身につけてください。

先生への質問

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