作り出すのは、ボーカルがグループで歌っているような臨場感
「良い音」とは何か
スピーカーは、商品によって聞こえる音に差があります。どの製品も「良い音」をめざして作られているとするなら、「良い音」とはなんでしょうか。どの場所で、誰が聞いても「良い音」は同じでしょうか?
スピーカーで音楽を流すのにも、部屋で集中して音楽鑑賞をする場合もあれば、ショッピングモールでBGMを流す場合もあります。BGMなら、さほどはっきりと音楽が聞こる必要はありません。また、そこにいる人はスピーカーに対して常に正面を向いているわけではなく、いろいろな向きにいるので、音楽鑑賞とは違うスピーカーの設計が必要です。
方式の異なるスピーカー
通常のスピーカーは、円錐形の部分が形を保ったまま前後に振動して音を出します。このようなスピーカーの音は、例えるならスポットライトのような鋭くまぶしい音です。響きの多い部屋で測ると、5mくらいまでは直接音が届きますが、そこから先は反射音が増えていきます。一方、振動板そのものがくねくねと動いて音を出すパネルスピーカーというものも作られています。音が拡散する性質があり、ぼやっとした音が特徴です。ぼやっとしているからこそ、いくつかのスピーカーを置いた時にも、それぞれの音が干渉しにくく、反射音もあまり気になりません。
高臨場感再生システム
パネルスピーカーはBGMや公共空間での放送には「良い音」と言えるでしょう。また、まぶしい音である普通のスピーカーの間にパネルスピーカーを置き、左右の音を混ぜた音を流すと、右と左の音のつながりが良くなったように感じられます。この仕組みを利用して、大勢のボーカルが歌っている曲を、ボーカル一人ごとに1つの普通のスピーカーを並べ、その間に全ボーカルの音を流すパネルスピーカーを置くと、本当にそこで並んで歌っているような臨場感が再現できます。既存の録音音源でも、スピーカーをうまく使うことで、その場所に適した音を作り出すことができるのです。
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九州大学 芸術工学部 芸術工学科 音響設計コース 准教授 河原 一彦 先生
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