ミクロの世界の仕組みから「超伝導」の謎を解き明かせ!
100年以上たっても仕組みがわからない
「超伝導」とは、金属や化合物を超低温にすると、電気抵抗がゼロになる現象のことです。現象そのものは100年以上前に発見されました。当初は絶対零度(-273℃)近くまで冷やさなければならないとされていましたが、その後、マイナス140℃くらいでも超伝導になる物質が発見されました。
現在もさまざまな研究が進められていますが、実は超伝導が発生するはっきりとした仕組みや理由は解明されていません。超低温下での電気伝導体の構造変化や電子の動きなど、ミクロの世界の仕組みを解明しなければ、超伝導技術を飛躍的に発展させることは困難です。
マイナス同士を結びつける「立役者」はいるのか
温度が下がると電子が動きやすくなります。そのため、超低温下では2つの電子がペアを組んで動くようになり、電気抵抗がゼロになるという大まかな理由は、かなり前から提唱されていました。ただ、電子は負電荷なので、マイナス同士は反発し合うはずです。そこで、電子と電子を結びつける何らかの「立役者」が存在するのではないか、それは電気伝導体の元素の中のプラスイオンなのではないかと、さまざまな研究が進んでいます。
そもそもの仕組みを解明して技術革新を起こす
電子は「スピン」と呼ばれる動きで、上向きや下向きに並んでいます。超低温状態になると、磁気的な作用で電子の向きがバランスよく並んでつながるという説があります。一方で、物質のプラスイオンは格子状の枠組みの中に並んでいて、この格子が上向きや下向きの電子をガッチリとつなぎ合わせるのではないかという説も有力視されています。
現在、より常温に近い温度域で超伝導を発生させる研究が進められており、実現すればエネルギー分野をはじめ、さまざまな工業分野で画期的なイノベーションが起こるでしょう。そのためにも、電気抵抗がゼロになる「そもそもの仕組み」を解き明かさなければならないのです。
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大阪公立大学 工学部 電子物理工学科 准教授 安齋 太陽 先生
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