いま注目の「有機EL」の先を見据えて
水素結合をコントロールする
水素結合は水分子の間に働く水素イオンを介した「弱い」結合として知られています。酸素や窒素などの電気陰性度の大きい原子の間に水素イオンを介して働く静電的な相互作用です。生体内では、DNAの塩基対形成やタンパク質の立体構造の保持にも水素結合が使われています。
そこで、「強い」水素結合を構築して、水素結合を担う水素イオンの動きをうまくコントロールすることで、分子の機能性を高めようという研究が行われています。そのための分子設計と新たな分子の開発が進んでいるのです。
よく目にする「有機EL」って何?
水素結合を利用した機能性分子には、粉末の状態でも強い蛍光を発するものがあります。このような分子は、最近注目を浴びている有機ELのための材料としても期待できます。家の照明を蛍光灯からLEDに替えると、省エネになります。有機ELとは、分子をベースに作られた発光ダイオード(LED)のことで、照明やテレビ、スマートフォンのディスプレイなど、身近なものへの実用化に進んでいます。現在市販のLED照明は無機物で出来ていますが、近い将来、家庭の照明にも有機ELが使用されることになるはずです。
赤い光や白い光は難しい!
有機ELの更なる発展には、より優れた材料開発がカギとなります。光の色の中で一番発光させるのが難しいのは赤色です。分子を赤色に光らせるためには、分子サイズを大きくする必要があり、合成するのが難しくなります。
最新の研究では水素結合を利用することで、コンパクトなサイズながら、赤く強く光る分子の合成が成功しています。また、白色に光らせるには、通常は複数の種類の分子を用いる必要がありますが、1種類の分子だけで白色を作り出すための手がかりも見つかっています。光るものだけに限らず、アイデア次第で、より良いものや全く新しいものが作り出せるのが、この研究の醍醐味と言えるでしょう。
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