古い建物を安全に使い続けるために! 壊さずに測る技術

古い建物を安全に使い続けるために! 壊さずに測る技術

古い木造建築の性能

人が暮らす家は、安全であることが必要です。日本では地震が多いため、それに耐える構造でなければなりません。新築の場合は、現在の構造基準に沿った設計がされるので一定の安全は確保できますが、古い建物はどうでしょうか?鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物は、研究が進んでおり建物の性能をシミュレーションすることが可能です。しかし、古い木造建築は現在と異なる工法である場合も多く、実験で確認しないと性能を予測できないことが多く残っています。携帯電話のような大量生産品であれば、壊すことで調べることもできます。しかし、建物は壊して調べるわけにはいきません。ましてや文化財のような貴重な建物の場合、材料を抜き取ることすら難しい場合もあります。

「非破壊検査」で強度を調べる

そこで、壊さずに材料の性質を測る「非破壊検査」を建物に応用する研究が進められています。さまざまな分野で非破壊検査法が開発され、木材では打撃音を使ったものが利用されています。古い木造建築に多く見られる土壁の強度を測るために、壁土表面に小さな鋼の圧子(強度試験に使用する物質)を押し当てて力と変形を測定する方法が新たに開発されました。実験室で、壁土サンプルで同じように実施したデータを蓄積し、現場で得られた値と照らし合わせて強度を予測します。さらに、建物全体のシミュレーションに結果を適用して建物の耐震性能を予測します。

循環型社会に欠かせない「サーキュラーデザイン」

古い木造建築の耐震性能を壊さずに予測できるようになれば、補修や補強を効果的に実施でき、壊して建て直さずに済みます。補強する場合も、安全を過剰に見積もる必要がなくなります。これからの循環型社会では、新築でも廃棄物を出さずに、後の利用方法まで考えた「サーキュラーデザイン」を心がける必要に迫られています。古いものを安心して使い続けるためにも、既存の建物を精度良く測り予測する技術の進歩が期待されているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

京都工芸繊維大学 工芸科学部 デザイン科学域 デザイン・建築学課程 准教授 村本 真 先生

京都工芸繊維大学 工芸科学部 デザイン科学域 デザイン・建築学課程 准教授 村本 真 先生

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建築学、文化財科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

建築は幅広い知識が必要な分野です。例えば、古い建物を調査して評価するには、歴史や工法の知識が必要です。理系や文系といった分類はほとんど意味がありません。また、ロボットや3Dプリンターを用いて新しい材料による建築や新しい工法も研究もされていますが、これには情報技術や生物化学の知識が必要でしょう。自分の研究が思わぬところとつながり、様々な知識の必要性を痛感することもあります。ぜひ今のうちに本を読んだり、実際に見たり体験したりして、幅広い基礎知識と実装する力を身につけてください。

先生への質問

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京都工芸繊維大学に関心を持ったあなたは

歴史都市京都にあって、本学は、伝統文化や伝統産業との深い結びつきを背景に、工芸学と繊維学にかかわる幅広い分野で常に先端科学の学理を探求し、「人に優しい実学」 を志向する教育研究によって、広く産業界や社会に貢献してきました。さらに、本学は、長い歴史の中で培った学問的蓄積の上に、感性を重視した人間性の涵養、自然環境との共生、芸術的創造性との協働などを特に意識した「新しい実学」を開拓し、伝統と先端が織りなす文化を創出する「感性豊かな国際的工科大学」を目指します。