光合成をやめ、キノコに頼って生きているランがある?!
キノコの助けを借りて生きるラン
植物のランは、世界で2万5千種以上あるといわれるほど種類が多く、その生態も非常に多様化しています。ランは発芽し、葉を出して成長するときに、共生しているキノコの仲間に栄養供給を頼っています。つまり、ランは特定のキノコがいないと、発芽も成長もできない一風変わった植物なのです。このようなランとキノコの不思議な関係は、菌根共生とよばれる共生関係の一つです。陸上の植物のほとんどは、土のなかにいる菌根菌という菌の助けを借りて、成長しています。菌根菌と植物は、本来、お互い助け合う関係にありますが、ランはこの共生関係を利用して、一方的にキノコから栄養をもらい、発芽します。
光合成をやめてしまったラン
ランのなかには、光合成をやめて、一生をキノコに頼って生きていく進化を選択したランがあります。それは、タカツルランというランです。光合成をしないので葉を持たず、根に共生しているキノコから栄養をもらうことで、ツルが10mにも成長します。このように、菌に依存している植物を菌従属栄養植物といいますが、タカツルランはその中でも世界最大級の大きさです。タカツルランと共生するキノコは枯れた木を分解する菌です。菌との関係を調べるため、タカツルランの根を採取し、DNA解析を行うことで、タカツルランが37種類以上もの多様なキノコに頼って生きていることがわかりました。
キノコ研究はランを救う
日本に生育している野生ランは、なんとその7割が絶滅危惧種です。しかし、ランは種子をまいても、相性の良いキノコがいる場所でしか発芽できません。ランを救う鍵は、共生するキノコを知ることです。ところが、多くの野生ランでは、未だ共生しているキノコの種類すらわかっていません。ランの種類によって発芽に必要なキノコ、成長に必要なキノコが異なります。ランと関係をもつキノコは何なのか? そして、そのキノコがどこにどのように分布しているのか? 共生するキノコを知ることが、ランの保全につながります。
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先生情報 / 大学情報
佐賀大学 農学部 生物資源科学科 生物科学コース 准教授 辻田 有紀 先生
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農学、植物学、菌学、生態学、保全生態学先生が目指すSDGs
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