ペットボトルを水だけで原料にリサイクルする技術とは
回収後のペットボトルの行方
近年深刻化していることに、資源の枯渇問題がありますが、その最たるものが石油です。石油は燃料としてだけでなく、いろいろな工業製品となって生活を支えています。中でもなじみ深いのがペットボトルです。現状では、ペットボトルは回収された後、熱可塑性を利用して、衣類などにマテリアルリサイクルするのが主流です。そんな中、水だけを用いて、ペットボトルを原料であるテレフタル酸とエチレングリコールに加水分解するリサイクル技術が開発されました。
低コストのリサイクルを実現
その技術とは、高温高圧の水の中でペットボトルの素材であるポリエチレンテレフタラートを加水分解する方法です。ステンレス製の反応器に水と粉砕したペットボトル片を入れ、水が300℃になるまで加熱します。ペットボトル片はエチレングリコールとテレフタル酸の2つが交互に結合(縮重合)していますが、その結合部に高温の水の分子が入り込み切断することで分解(加水分解)されます。
元の原料にまで分解してから改めてペットボトルを作り出すので、新品と同様の製品を作ることができます(ケミカルリサイクル)。水のみを使うので環境や人体へのリスクがないだけでなく、有害物質も発生しません。現在のペットボトル回収システムと組み合わせることで、新品石油から作るよりも低コストです。この方法でリサイクルができれば、石油の消費スピードは軽減し、環境問題や有害物質問題も解消の方向に向かいます。
「グリーンケミストリー」の理念
このように、人と環境にやさしい生産方法による、従来よりも高効率で経済性の高いものづくりを研究する分野を「グリーンケミストリー」と言います。高温高圧の水を使った技術はバイオマスにも応用されています。この方法で有機系廃棄物を有用な化学原料に変換することが可能になっており、石油資源の一部の代替として期待されています。「グリーンケミストリー」の理念がさらに広がりをみせ、研究が促進されれば、さらなる循環型社会の構築が進んでいくことでしょう。
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先生情報 / 大学情報
岩手大学 理工学部 化学・生命理工学科(令和7年度から 理工学部 理工学科 化学コース所属) 教授 白井 誠之 先生
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