人工知能は医療の世界に何をもたらすか?
取り扱いが難しい医療データ
病院をはじめとした医療現場では、電子カルテなどによって日々膨大な量の医療データが集められています。これらのいわゆるビッグデータの中から医療に有効活用できる情報を取り出そうとすると、現時点ではかなりの困難をともないます。というのも、従来の医療データは種々雑多な性質のデータの集まりである上、性別や年齢によって変わる基準値に関しても指標が統一されていないなど、条件をそろえて信頼できるデータを抽出することが難しいからです。しかし、これらの医療系ビッグデータを人工知能(AI)などの技術を用いて解析するデータマイニングの研究が進めば、医療現場には大きな変革が起こるのでは、と期待されています。
一家に一台、医療AI端末
いずれは一般家庭にも、病院とネットワーク接続されたAIを搭載している医療アシスタント端末が普及することが考えられます。そうなると、日々の健康状態をAIに相談すると、AIは「もっと体を動かした方がいいですよ」とエクササイズを紹介したり、家で薬を服用するときのアドバイスをしたり、体調がすぐれないときは、AIが私たちの体のデータを検出し、必要であれば病院に行って診察を受けるようにアドバイスします。さらに病院に到着したときには、すでに自宅のAIから病院にデータが届いていて、スムーズに診察を受けることができるでしょう。病院では医師とAIが共同で診断を下し、AIは診断後の治療の手助けも行うようになるかもしれません。
医療者の有能な助手としてのAI
医療系ビッグデータを的確に活用できる状況になれば、このようなAIによる医療現場のサポートは、そう遠くない将来に実現されると考えられています。医師に取って代わるのではなく、膨大なデータを活用して医療ミスを未然に防ぎつつ、自宅から医療現場まできめ細かく手助けする、医療者の有能な助手としての活躍がAIには期待されているのです。
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先生情報 / 大学情報
高崎健康福祉大学 健康福祉学部 医療情報学科 教授 長澤 亨 先生
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