子どもの心に関わる支援者は、そのトラブルにどう対応するか?
子どもや若者にもあるさまざまな心のトラブル
心のトラブルや精神の病気は、子どもや若者も無縁ではありません。自閉スペクトラムや注意欠如多動症などの発達障がい、統合失調症や躁うつ病などの精神疾患、摂食障がいや心身症、チック、睡眠障がい、不登校、引きこもり、虐待など、子どもにも関係する心の病気はさまざまです。こうした子どもたちに対して、医師や精神保健福祉士、医療ソーシャルワーカーを含めた支援者は、どんなケアをすればいいのでしょうか。
複雑な要因に対応するために
子どもの精神疾患や心のトラブルが引き起こされる要因は複雑です。生まれながらの資質だけでなく、家庭環境、育児放棄などの虐待、生きづらい社会環境など、人それぞれに数多くの要因が絡み合っています。また、子どもの心には、家族の存在が大きく影響します。こうした複雑な要因に対処するには、医療だけでなく、福祉や教育、心理など、多職種多領域によるサポートが不可欠です。症状の改善だけでなく、子どもがより生きやすい方向性を自ら見つけ出せるように支援する必要があります。
その中で精神科医には、ケア全体のマネジメントを担う立場として、当事者である子ども自身の考え方と家族など周囲の意見とを相対的に理解し、客観的な視点から判断をすることが求められます。苦しんでいる子どもに寄り添う「蟻(あり)」の目線と、システム全体を見渡す「鳥」の目線の両方が、精神科医を含めた支援専門職には必要とされているのです。
本当の意味で役立つ「知恵」を身につける
精神保健や医療福祉で支援を担う専門職の役割は難しいものです。治療や支援の効果を数値で測ることは簡単にできませんし、こうすればすぐ解決するというマニュアルもありません。多くの知識を学んで、基礎的なトレーニングを積み、その上で現場の実体験を蓄積していくことが必要です。当事者の置かれた立場を想像し、その体験に共感し、自身の経験や研究で得られた知見と結び付けることで、真に個々の当事者にとって役に立つ「知恵」をつかむことができるのです。
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先生情報 / 大学情報
高崎健康福祉大学 健康福祉学部 社会福祉学科 教授 上原 徹 先生
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