生体イメージング技術で細胞の動きを追え!
生きた細胞を見るイメージング技術
体を作るほとんどの細胞は決まった場所から動かず一生を終えるのに対し、リンパ球やマクロファージなどの免疫細胞は体の中を動き回ります。そのため、免疫細胞の機能を知るにはその動きの解析が欠かせません。しかし従来の、取り出した組織の死んだ細胞を見る方法では、動きを観察することができませんでした。
そこで、特殊な顕微鏡を使った「生体イメージング技術」が開発され、生きた動物の体内の細胞の動きを追う研究が行われています。この生体イメージング技術により、生体環境でしか見えない細胞の姿や、細胞間のコミュニケーションの様子などが明らかになってきました。
動く画像による「動かぬ証拠」
例えば、代謝のために骨を壊す「破骨細胞」の前身となるマクロファージについて、骨髄で作られてそのまま骨を壊す説と、血中をパトロールしてから壊すべき骨に到達する説が対立していました。この論争に終止符を打ったのが生体イメージング技術です。マクロファージが血管から骨の中に入ってくる瞬間が動画でとらえられ、後者の説の証拠となりました。
また、骨を壊す破骨細胞と骨を作る「骨芽細胞」との関係について、従来の方法では二つの細胞が離れている状態とくっついている状態が観察されており、どちらが正しい状態なのかわかりませんでした。これも、生きた細胞の状態を観察した結果、両者は普段は離れており、情報交換するときなどはくっつくということが解明されました。
多細胞生物が機能するためのシステムとは
生体イメージング技術により、リウマチで骨を壊す破骨細胞の発見をはじめ、さまざまな細胞の動きや機能が明らかになりました。これらの成果を医療に応用し、現在では治せない病気の治療法の確立につなげることが期待されています。
また細胞の動きについての研究を発展させ、細胞の動きを操作することや、さらには情報学や社会学とも連携して、細胞の動きを統率する上位システムの解明が目標とされています。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 医学部 医学科 教授 石井 優 先生
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先生への質問
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