マイクロメートル単位の小さな工夫が、大きな省エネ効果を生み出す!
ハスの葉が濡れにくい仕組み
池や沼に浮かんでいるハスの葉は、水を非常によくはじくことが知られています。泥などの汚れもつきにくく、たとえ汚れても、雨などですぐに流れ落ちてしまいます。ハスの葉の表面は一見平らに見えますが、拡大してみると、数マイクロメートル(1000分の1ミリ)ほどの凹凸があり、それぞれにさらに小さい突起が出ている構造になっています。これらの非常に小さな凹凸によって固体表面と水滴が接触する角度が大きくなるため、ハスの葉は水をはじきやすく、濡れにくい特性を発揮できるのです。
微細な構造が液体の抵抗を減らす
ハスの葉の表面のような微細な構造を応用して、水などの液体が流れる時の抵抗を減らせないか、という研究が進められています。例えば、液体が流れる流路を作る時、流路の表面に10マイクロメートルほどの小さなクボミを並べて空けておくと、液体が流路を流れる時、そのクボミの部分に気泡が取り残されます。すると、その気泡の表面を液体が通過する時の抵抗が減るため、流路全体での抵抗を減らすことができるのです。こうした表面の微細な構造による抵抗の減少の仕組みについては、クボミが規則的に並んでいた方がいいのか、どのくらいの大きさが一番いいのか、どのような形状がいいのかなど、まだよくわかっていない部分も多く残されています。また、液体の種類によっても大きく左右されるため、どうやって気泡をクボミに閉じ込めて抵抗の減少につなげるか、さらなる研究の成果が待たれています。
船や水道管の抵抗も減らせるかも
このような分野の研究が進めば、医療分野などへの応用が期待できるほか、例えば船が水上を進む時の水の抵抗を小さくしたり、水道管を流れる水の抵抗を減らしたりできるようになるでしょう。マイクロメートル単位で作られたごく小さな構造を、身の回りのさまざまな場所に応用することは、大きな省エネ効果につながる可能性を秘めているのです。
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