はるかに遠い宇宙、銀河の進化をどうやって突きとめる?
さまざまな波長で、宇宙や銀河を探る
空間を波として伝わる電磁波には、波長の短い、つまりエネルギーが高い順にガンマ線・エックス線・紫外線・可視光線・近赤外線・中間赤外線・遠赤外線などがあります。それぞれの波長で放射を出す物理過程が違い、得られる情報も違うので、さまざまな電磁波を使った宇宙や銀河の研究が進んでいます。
例えば、エックス線の観測で、ブラックホールの重力場にガスが落ち込む際の摩擦熱や、大きな星が一生を終える時の超新星爆発をとらえられます。とても高温の物質や高速で運動する電子がエックス線を出すためです。
紫外線は重い星を、遠赤外線は塵の放射熱を
紫外線では、太陽より高いエネルギーを放射する、太陽の10倍以上重い星をとらえられます。重い星の寿命は100-1000万年ほどで、138億年の宇宙の歴史から見るととても短いため、重い星によって宇宙年齢の各瞬間ごとに銀河がつくっている星の形成率を測ることができるのです。
また遠赤外線では、銀河の中にある塵(ちり)の放射熱をとらえられます。空に塵があると夕焼けが赤くなりますが、これは塵が、星の発する青い光を吸収・散乱する性質があるからです。そして、吸収された光のエネルギーは「エネルギー保存の法則」によって、塵粒子から遠赤外線として放出されて観測されるというわけです。この分野の研究から、70~80億年前には新しく形成された星の9割以上が塵に覆われていたことが発見され、1つの理論モデルとなりました。
若い研究者も活躍できる!
天体物理学では、地上の望遠鏡・人工衛星・ジェット機・気球などで得た観測事実と、確立した物理法則を積み上げて、「銀河からどのような電磁波が出てくるか」などを予言する「理論モデル」を構築します。それが実際の観測と整合しているかを検証しながら分野が発展していくのです。
観測データも誰でも使えるよう公開されているので、大学理系程度の物理知識があれば、若い研究者もアイデア次第で最先端の結果を出せる、挑戦が容易な開かれた分野です。
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先生情報 / 大学情報
名古屋大学 理学部 物理学科 准教授 竹内 努 先生
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