植物のかたちはどう決まる?  〜収穫量アップをめざして〜

植物のかたちはどう決まる?  〜収穫量アップをめざして〜

持続的な食糧生産の実現に向けて

世界の人口は21世紀後半に100億人を突破すると予測されています。100億人が暮らすためには、食糧増産が重要な課題となります。特に、人口爆発が進むアジア・アフリカ地域で主食となるイネです。また、国内ではコメのニーズが多様化して、農家の高齢化も進んでいます。持続可能なコメ生産のためには、単位面積当たりの収穫量を増やして、生産コストを下げる必要があります。そのためのアプローチの一つが、1株あたりの収穫量に影響する、イネの「穂のかたち」のデザインです。

穂のかたちをデザインする

日本で多く栽培されているコシヒカリは、1本に140粒ほどの種子をつけます。しかし、さまざまなイネの品種の中には、400~1,000粒もの種子をつけるものがあります。種子のつき方や数に影響するのは、穂の枝分かれの数、そして分かれた枝の長さです。交配によって、これらの形質を増やすあるいは伸ばす遺伝子座を合わせ持つイネを作ったところ、穂のかたちが大きく長くなり、最終的な種子数も増やすことができました。
イネの新しい品種を作り出すまでには約10年かかり、気の長い仕事です。大学で研究者が取り組むイネの基礎研究は、育種家が新しい品種を育成する上で大きなヒントになります。

野生種に学び、気候変動にも対応できるイネを

大きな気候変動が起きている昨今、環境変化の影響を受けずに安定して収穫できる品種を作ることも重要な課題です。これまで野生の植物から人間にとって都合のよい性質を持つものを選んで栽培してきた結果、栽培品種では遺伝的な多様性が乏しくなっています。そこで、環境変化に耐えうる新品種を作るために、野生のイネの研究が進んでいます。60年以上も枯れずに生き続けるものや、地下茎でどんどん増えるもの、耐塩性が強いものなど、興味深い性質を持つ野生のイネがあります。研究が進めば、一度田植えをすれば何度も収穫できるイネや、塩害や洪水に耐えるイネなどができるかもしれません。

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先生情報 / 大学情報

名古屋大学 農学部 資源生物科学科 植物遺伝育種学研究室 助教 縣 步美 先生

名古屋大学農学部 資源生物科学科 植物遺伝育種学研究室 助教縣 步美 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

遺伝育種科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

大学では、自分が興味を持ったことをどんどん深掘りしていく学びができます。知られていなかったことを明らかにしていく学びは、とてもワクワクできて楽しいものです。中でも農学部は、フィールドに出ては体を動かしながら作物の形質を観察し、実験室では分子生物学や分子遺伝学、ゲノム科学を駆使した研究を展開する、その両方をできることが大きな魅力です。食糧問題の解決に挑みたい、農業を通して国際貢献をしたい、体を動かすのが好き、それならぜひ一緒に農学部で未来を作りましょう!

名古屋大学に関心を持ったあなたは

名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。