「放射光」が未来を照らす夢の光になる!
放射光とは?
「放射光」とは、ほぼ光の速さで運動する電子が、磁場によって進行方向を変える時に発する光(=電磁波)のことです。放射光は赤外線からX線にいたる幅広い波長の光を連続的に含み、遠く離れても光が広がりにくい「指向性」や光の振動方向に規則性がある「偏光性」を有しています。
物質中の原子がもつ電子軌道は、それぞれ特定の波長や偏光性をもった光と強く相互作用します。電子の状態は物質の性質や機能と密接に結びついているため、それを調べるためには、波長を連続的に変化させ、偏光性も自在に制御できる放射光がとても有用なのです。
物質の性質の起源をさぐる
新材料や電池などの研究・開発では、素材中の原子の構造や電子の状態を知ることが重要です。放射光はこのような場合に威力を発揮します。例えば、超伝導体、磁性体、トポロジカル物質などの電子の状態を超精密に計測するために放射光を用いています。超伝導体とは温度を下げていくと、ある温度で電気抵抗がゼロになる物質です。電気抵抗がなければジュール熱が発生しないので、省エネにつながります。また強力な磁石が作れるとエネルギー効率が良いモーターができ、家電製品や電気自動車などにも広く使えます。物質中の電子の状態を深く理解し、それを制御することが新物質開発に必要なのです。
新しい物質が暮らしを変える!
超伝導の技術は、医療に使われるMRIやリニアモーターカーなどに応用されています。また原子レベルで制御した人工超格子でつくった磁石は高速で動作する大容量の記録媒体(メモリー)に応用されています。電子は粒子としても波動としてもふるまい、その性質は相対論的量子力学で理解できます。最近、電子の波動としての性質に関わる「位相」が脚光を浴びています。新しく発見されたトポロジカル物質では、位相に関わる興味深い量子現象が精力的に研究されています。これが応用されるとエネルギー、環境、情報基盤への大きなインパクトが期待されます。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 理学部 物理学科 教授 島田 賢也 先生
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先生への質問
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