日本発の夢の技術 ハードX線レーザーが変える未来
レーザーの進化
レーザーとは、誘導放出というアインシュタインが理論的に考えた過程を使い増幅した光です。単色で強度があり、指向性も備えています。1960年に初めてレーザー光がつくられ、1986年にX線という非常に短い波長の光をレーザーにすることに成功しました。さらに2009年にアメリカ、2011年に日本で大型の自由電子レーザー施設が建造されると飛躍的に研究開発が進み、1Å(オングストローム)という原子サイズの非常に短い波長のX線レーザーがつくられました。
日本で生まれたハードX線
X線自由電子レーザーは非常に短い時間で分子などの構造を見ることや、医薬品において化学結合が変化する様子をリアルタイムで見ることができ、応用研究もさまざまに発展しています。それでも、X線自由電子レーザーの色(発振スペクトル)には、まだわずかにバラツキがあります。そこでより理論限界の単色光をつくるため、「X線自由電子レーザーでレーザーをつくる」という研究が行われました。実験は兵庫県にあるX線自由電子レーザー施設・SACLAで行われ、日本のX線光学技術の粋を集めて作られた非常に高精度で形が整った鏡が用いられました。そして2015年、10²⁰W/cm2という前人未到だった強度を達成し、それにより単色と呼べるハードX線レーザーが誕生したのです。
世界を変える可能性
ハードX線レーザーは世界中から注目を集め、応用研究も盛んに進められています。将来的には、エンジンなどの金属壁を透過させて、内部の燃焼の様子を測定する、といったことも可能になるといわれています。また、干渉性が非常に強いという特性を利用して、ハードX線領域でホログラム(映像を3次元的に記録する技術や媒体)が可能になれば、現在主流のCTスキャンよりもより立体的に体の中の状況を可視化することができるでしょう。さらに、強い指向性を利用して地球にいながらにして月の表面の情報を得ることも期待されるなど、ハードX線レーザーには計り知れない可能性が秘められています。
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先生情報 / 大学情報
電気通信大学 情報理工学域 III類(理工系) 光工学プログラム 教授 米田 仁紀 先生
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