ガラスに結晶を析出させると、新しい機能性材料ができる

ガラスに結晶を析出させると、新しい機能性材料ができる

ガラスに結晶を析出させ、特殊な機能を持たせる

ガラスは結晶構造を持っていませんが、高い温度で溶かしその温度をしばらく保持すると結晶が析出します。このようなガラスを「結晶化ガラス」と言います。どのような結晶が析出するかは、ガラスの成分や温度によって決まりますが、その中には特殊な機能を持つものがあります。例えば、ある波長の光をガラスに当てると通常は吸収されるか散乱するかのどちらかですが、特殊な結晶化ガラスに当てると元の波長の半分の波長になって出てくることがあります。

非線形光学に役立つ透明な結晶化ガラスを開発

このような光と物質の間に起こる現象を扱う学問を「非線形光学」と言います。非線形とは電磁場に比例しないという意味です。これはレーザーなど光を使ったさまざまな応用分野に関係しています。そのため、光に関係する性質を持つ結晶化ガラスを作ることは、大きな可能性を秘めているのです。ただ問題なのは、ガラスに結晶を析出させると結晶間に界面ができるため、透明ではないガラスができてしまいます。透明ではないと光がまっすぐに透過してくれないので、その効果を検証することができません。そこで、透明な結晶化ガラスを作ることが重要になってきます。

より安価で、簡単なプロセスで材料を作る

透明にするには、析出する結晶の粒を小さくしたり、結晶の向きを揃えたりという工夫が必要になります。それが可能な材料を求め、いろいろと試してみることも重要です。もちろん、透明だけならば水晶のような1つの大きな結晶を作ることも可能です。すでにこのような材料は工業化されていますが、製造に時間やコストがかかったりすることがあります。そこでもっと安く簡単なプロセスで、同じ機能を持つ材料を作ることができれば、工業の分野で大きな意味を持ちます。ガラスからは、このように成分や工夫によって、特殊な機能を持つ新しい材料を作ることができるのです。

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岡山大学 工学部 化学・生命系 准教授 紅野 安彦 先生

岡山大学 工学部 化学・生命系 准教授 紅野 安彦 先生

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無機材料化学

メッセージ

私が、新しい構造や機能を持った無機材料を作るという研究分野を選ぶようになったきっかけは、大きく2つあります。1つ目は大学受験の時に、化学系の学科を選択したことです。2つ目は、卒業研究の時に無機材料の研究室を選択したことです。その時々で最も興味のあることを選択しているのは確かで、興味のあることをとことん追究することは大切だと思います。あなたも若い時に持っている幅広い興味を狭めることがないように、いろいろな分野で興味を持ち続けてほしいと思います。

岡山大学に関心を持ったあなたは

岡山大学は、これまでの高度な研究活動の成果を基礎として、学生が主体的に“知の創成”に参画し得る能力を涵養するとともに、学生同士や教職員との密接な対話や議論を通じて、個々人が豊かな人間性を醸成できるように支援し、国内外の幅広い分野において中核的に活躍し得る高い総合的能力と人格を備えた人材の育成を目的とした教育を行います。